がんリハビリ(リハビリで日常生活のQOLを高める!)

その1

これから5回にわたって連載するのは、「がんリハビリ」です。「リハビリ」というと、損なった機能の回復とのイメージがありますが、「がんリハビリ」はもっと広い意味での、予防や緩和も含まれます。QOLを維持する/上げるためのヒントがたくさんあると思います。


慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室の辻哲也先生の講演を紹介します。2016年12月20日の福岡での日本肺癌学会PAPプログラムでの口演をまとめたものです。         


全体の構成です。


(1)がんリハビリの目的と対象
(2)手術に際しての予防的がんリハビリ(呼吸リハビリ)
(3)放射線・化学療法中・後の運動療法、悪液質対策、筋力と生存期間の関係
(4)骨転移、緩和ケア主体の時期のリハビリ、がんリハビリ5か条
(5)実践ビデオ

(1)がんリハビリの目的と対象

今は、がんと共存しながら、どう生活の質QOLを高めていくかというところに視点が移ってきています。がんリハビリを考えていくうえで、病期別で目的を分類するということがよく用いられます。

最初が、がんが発見、診断されて、まだ治療が始まる前の予防的な対応です。後遺症や合併症を起こさせないような予防的な対応や、手術の前の呼吸リハビリなどは、この代表例です。そして回復的なリハビリ。治療が開始されているとき、もしくはがん告知されたけれども、いろんな障がいが残った患者さんに対する対応です。通常リハビリテーションというと、この回復的なところをイメージされると思います。


がんリハビリで特徴的なのが、維持的とか緩和的なリハビリです。積極的な治療を受けられているときの維持的なリハビリ。そして余命が半年未満と推定される終末期の患者さんが、なかなか積極的な治療が難しくなってきた段階においても、患者さんやご家族の希望を尊重しながら、症状の緩和を中心にQOLが高い生活が送れるように支援するのが、緩和的なリハビリです。


リハビリの対象となる障がいは、大きく分けて、がんそのものによる障がいと、治療の過程で生じる障がいに分けられます。

骨へがんが転移すると、痛みが出たりとか、骨がもろくなって骨折したりします。脳に転移すると、神経の麻痺が出たり、言語障がいが出たりします。脊髄に転移した場合でも同じです。そして治療の過程において生じる障がいとして、抗がん剤や放射線療法の後、安静していることによって筋力とか体力が落ちたりします。また、開胸手術のあとには、呼吸器系の合併症、肺炎などが起きやすくなります。そして、抗がん剤の副作用のしびれ、それらもリハビリの対象となります。


日本ではなかなかこのがんリハビリが進んでこなかったという実情があったのですが、2006年にがん対策基本法が成立し、がんの患者さんのQOLをサポートする施策を国としても行っていこうということが決まりました。身体活動の向上のためのリハビリテーションの専門職を育成するような研修が2007年から始まりました。これは医療者向けの研修で、がん拠点病院の医療スタッフがグループで参加して、2日間の研修になっています。今までもう1万人あまりの方々が研修を受けて、だいぶがんリハビリも認識されるようになってきたと思います。


そんななか、2010年度の診療報酬の改定で、がん患者リハビリテーション料という入院中のがんの患者さんにリハビリを行うことによって、診療報酬が算定できるようになりました。

入院中のあらゆるがんの患者さんの病状が網羅されているように思えます。入院中という縛りはありますが、リハビリを行うことによって算定ができるようになっています。このがん患者リハビリテーション料の算定には、先ほどの研修を受講するということが必須の条件になっていて、それによって治療、リハビリの質の担保を図っています。現在、全国のがん拠点病院の80%以上でがんリハビリが行われるようになってきました。


そして、質の高いがんリハビリを行っていくうえでは、ガイドラインもとても大事ということで、研究班を結成しまして、リハビリテーション医学会共同で作成しました。無料で見ることができますので、ぜひ一度覗いてみてください。

http://www.cancer-reha-wg.com/pdf/1404_cancerreha_guidelines.pdf
http://www.cancer-reha-wg.com/


一般のメディアにも紹介される機会がだいぶ増えてきて、新聞やテレビでも紹介されるようになってきています。


次回は、具体的に、がんリハビリの内容についてお話したいと思います。