がんリハビリ(リハビリで日常生活のQOLを高める!)

その2

前回はリハビリの目的等を話しましたが、がんの状況に応じた具体的なリハビリの中身に入っていきます。

 

(2)手術に際しての予防的がんリハビリ(呼吸リハビリ)

リハビリというと、手術が行われて、何か合併症、後遺症が起きてから実施されると想像されますが、がんリハビリの場合には、手術の前から関与します。手術後の早い段階からリハビリを行って、合併症を起こさせない。そして、後遺症を軽減するようにすれば、患者さんも苦痛なく過ごすことができますし、入院期間も短くなれば、医療経済的にもいい効果があると思います。


手術の前から面識を持っていれば、手術直後で体の状態不安定だったり痛かったりしても、知った間柄ならスムーズな管理ができます。また患者さんの手術の不安も大きいですが、手術のあとどんな後遺症、合併症が出て、どうやってリハビリして自宅復帰、社会復帰していくのかについての不安を持たれている方もたくさんおられます。そのため、手術の前にリハビリの立場で説明させていただくと、不安の軽減にもつながります。また手術前にしっかりリハーサルして、いろんな呼吸リハビリのやり方を習得しておいてもらえれば、手術の後にスムーズな実践ができます。手術後にいきなり指導させていただいても、なかなか不安定な時期には、習得するのは難しいです。


どうして術後のリハビリが大事なのかということについて簡単にお話ししたいと思います。全身麻酔の手術で、胸開けるような手術だったり、お腹開けるような手術だったりすると、たんがどうしても増えます。手術のあと横になっていると、たんがどんどん体の背中の面にたまってきます。痛みもあって、なかなか深い呼吸もできなくて、たんを出すにしても痛いから、咳も出せない。そうすると、たんって汚いですから、それが原因で肺炎無気肺の合併症を生じてしまうということになります。

そのため、できるだけ手術のあとは、傷の痛みで浅い呼吸になってしまうのですが、たんをしっかり出していただいて、深い呼吸をして、早くから起きあがる。それによって合併症を防ぎましょうということです。手術の前から練習して、手術のあとスムーズに実践をしていきましょう。

腹式呼吸の深呼吸は、手術に限らず、手術をしていない方でも、ぜひやっていただきたいと思っています。

深い呼吸をするためには、最初から吸ってしまうと、肺の中にまだ空気が入ってる状態なので、まず息をふーっと1、2、3、4と時間かけて吐きます。吐くほうから始めるというのが、こつです。ふーっと時間かけて吐いて、全部吐ききったら、もう吸うしかないので、意識しなくても、すーっと自然に吸い込むことができます。吐くほうに少し意識を向けると深呼吸はとてもうまくできます。おなかが上下に動いて、腹式呼吸を感じるのですが、慣れてないとできないこともあるので、別におなかの上下にこだわらずに、深い呼吸をしていただければ、胸が上下する胸式呼吸でも大丈夫です。

 
あとハフィングという、たん出しですね。これは通常の場合でも、活用できると思います。

どうしても呼吸するときに肩の周りの筋肉がこります。通常、横隔膜を使い、上下で呼吸するのですが、呼吸が苦しい時、補助呼吸筋といって肩周りの筋肉も一緒に動かして、補助をします。そうすると肩がこわばってしまって、痛みを生じるので、肩の上下運動とかストレッチをするのがよいです。

肩回しであるとか、肩の上げ下げとか、首を回すとかっていうような肩周りをほぐすようなこともやっていくと、非常に楽になります。これも手術のあともそうですし、通常の状態でもやるといいと思います。


次は、インセンティブスパイロメトリーという呼吸訓練器です。

息を吸うとぐーっと上がって、どれぐらい吸えたか分かります。術前にリハーサルをして、術後に実践です。しっかり深い呼吸をしてハフィングを使って、自己排痰する。たんが背中にたまらないように体位変換の角度をつけ、インセンティブスパイロメトリーですね。それから翌日からは立って歩くようにします。

1週間が一つの目安ですが、体力が弱っている方々は、体力アップのためのトレーニングを続けていきます。呼吸トレーニングや腹式呼吸をやった方と、やっていない方で、手術のあとの患者さんを比べてみると、有意に呼吸リハビリをやった方が、術後の合併症の発生率が非常に減り、入院期間も短くなったという報告がたくさんあります。



手術が終わって、退院したとき、まだ100%回復していません。そのため、退院後、ご自分で自主トレーニングをやっていかないといけません。特にご高齢の方の場合、入院中毎日リハビリやっても、退院後家の中に塞ぎ込んで動かなくなってしまっては、いいことはありません。ご自宅でのリハビリは社会復帰に向けてはとても大事になります。



次回は、放射線、化学療法の最中と、後のリハビリテーションです。