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学校へ行こう!プロジェクト⑦

みなさん、こんにちは。

学会体験感想文を書いて、みんなでシェアしちゃおうという「学会へ行こう!プロジェクト。」古川さんが書いてくれました。

最初の外科治療のお話は、「小さく切る」のと普通の手術を比較して、もうすぐ答えが出るよ、というもの。終わりに出てくる「シャボン玉」のお話はびっくりですよ。


長谷川さん、感想文を、送ります。
かなり、堅い文章です。
しかたない、そういう人生を送ってきたのだから。

第56回日本肺癌学会学術集会に参加して

ひょうごがん患者連絡会  古川 はじめ


▼自己紹介


平成25年、に人間ドックを契機に肺がん(腺がん)が見つかり、右上葉切除術を受ける。

VATS ( Video – Assisted Thoracic Surgery )手術を受け、5日間入院する。手術で、2×1.7×1.5cm のがんを摘出する。気管支・肺動静脈断端にがん細胞はなかった。廓清されたリンパ節に転移はなく、cT1aN0M0 , Stage ⅠAと診断された。

EGFRの変異が検出されず、イレッサの適応がないことがわかる。手術後化学療法はせず、経過観察をして、今2年半が経過している。




▼演題の内容


Ⅰ肺がんの外科治療の話題、Ⅱ緩和医療のSPIKESの話題、Ⅲ「仏教の死生観について」、の3点について書きます。



Ⅰ肺がんの外科治療の話題

肺がんの外科治療に関する、聖マリアンナ医科大学の佐久久先生の講演から、書きます。

1982年から1988年までに臨床病期ⅠA期非小細胞肺がん患者が276人登録されたランダム化比較試験があった。結果は肺葉切除群の5年生存率が63%であったのに対し、縮小手術(区域切除または楔状切除)が42%であった。この結果より、現在の標準治療は、臨床病期ⅠA期非小細胞肺がんに対して、肺葉切除が標準治療である。

この研究結果が上記グラフである。

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この外科治療を縮小する研究として、臨床研究の大規模研究が日本で行われている。2002年から「胸部薄層CT所見に基づく肺野型早期肺癌の診断とその妥当性に関する研究(JCOG0201)」がおこなわれた。

 CT所見を(1)pure GGN : pure ground-glass nodule. (2)PSN : part-solid nodule. (3)solid nodule. と分類すると、画像上2cm以下で,すりガラス陰影(GGN)が75%以上の病変を,画像上非浸潤癌と定義できることがわかった。


 この研究より、JCOG0802とJCOG0804が現在、臨床研究中である。

内容は、臨床病期 IA 期の末梢に位置する 2cm 以下の小型肺癌に対する治療として、肺区域切除(縮小切除)の全生存期間が、現在の国際標準治療である肺葉切除より劣らないことを証明するため非劣性試験である。

 JCOG0802は、「肺野抹消小型非小細胞肺癌に対する肺葉切除と縮小切除(区域切除)の第Ⅲ相試験(JCOG0802/WJOG4607L)」

 JCOG0804は、「胸部薄切CT所見に基づく肺野型早期肺癌に対する縮小切除の第Ⅱ相試験(JCOG0804/WJOG4507L)」

この2つの研究が成功し、肺がん手術が今までの肺葉切除から縮小切除の方向に向かうことを、患者会としても期待を持ってながめたい。




Ⅱ緩和医療のSPIKESの話題

緩和医療の講演では、SPIKESという言葉を多く聞いた。これは、患者にとって望ましくない疾患情報を伝えるための,実用的なプロトコルであり、6 段階で構成されている。

(1)S ―― SETTING UP the Interview  : 適切な面談環境を設定する
(2)P ―― ASSESSING THE PATIENT’S PERCEPTION : 患者の認識を評価する
(3)I ―― OBTAINING THE PATIENT’s  INVITATION : 患者からの求めを確認する(どこまで知りたいかを把握する)
(4)K ―― GIVING KNOWLEDGE AND INFORMATION TO THE PATIENT : 患者に知識と情報を提供する
(5)E ―― ADDRESSING THE PATIENT’S EMOTIONS WITH EMPATHIC RESPONSES : 患者が抱く感情に共感を込めて対応する
(6)S ―― STRATEGY AND SUMMARY : 方針とまとめを提示する


 「バッドニュース」は、このような考え方で、医師から患者に提示される。われわれ患者は、このことを理解し、対応してゆかなければいけないと思います。




Ⅲ「仏教の死生観について」

メディカルスタッフシンポジウム。看護師、薬剤師と肺癌専門医師との対話空間3。死生観と意思決定 のセッションから、「仏教の死生観について」という演題名の臨済宗円覚寺派管長 横田 南嶺氏の講演について書きます。


今までは 人のことだと 思うたに 俺が死ぬとはこいつはたまらん(大田 南畝)という歌を示されて、講演早々、まったく心を「わしづかみ」にされてしまいました。

野口 雨情の書いた、シャボン玉の歌は、彼の子供が、生まれて間もなく、死んだことを歌った、とのことで、「シャボン玉消えた 飛ばずに消えた うまれてすぐにこわれて消えた」シャボン玉の本質は、周りの石鹸液にあるのではなく、中の空気なのだと諭された。だから、消えたように見えても、大きな空気の中で存在し続けているのだと、話を聞いて、心が落ち着きました。


朝比奈宗源というお殿様が、寺の和尚に「花は根に帰ると聞けば我も又 生まれぬさきの里に帰らん」という歌を見せて、褒めてもらおうと思った話で、和尚は「苦しいときには、苦しんで苦しんで死んでいきなさい。無理に苦しむまいと努力する必要などは何もないのだから、苦しんで死んでいけばいいのです。」

いかにも、禅寺の和尚が言いそうな言葉ですが、綺麗な言葉でまとめるよりは、汗にまみれて、生きていくことが大切なんだなと思いました。




▼まとめの一言

 はじめて、肺癌学会に参加しました。教育講演でも、シンポジウムでも、自由に聞けたのは、とても良かったです。患者向けのプログラムも充実していました。同じ時間帯に聴きたい講演が2つ重なり、どちらに行くか、かなり迷いました。迷うほど良い講演が3日間に開かれたと言うことは、学会のレベルの高さを感じました。

 今後も、患者と学会が手を取り合って、より良い肺がん医療が進んでいくことを願ってやみません。

 先生方、よろしくお願いします。

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