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学会へ行こう!プロジェクト⑤

みなさん こんにちは。


学会体験感想文を書いて、みんなでシェアしちゃおうという「学会へ行こう!プロジェクト。」今回は6人目、Iさんの登場です。


Iさんが書いてくれたテーマは、医療費の費用対効果について。なんだか難しそうですか?根本はすごく簡単なことです。「効果のある薬剤に関してはどんどん世に出るようにして、無駄なものは、淘汰される仕組みを入れる」というすばらしいものです。

ところが・・・
「効果のある」ってどこまでのことをいうんでしょう。肺がんは難治性のがんです。その治らない現状の中で「効果のある」ってどこまでのことをいうんでしょう。
イギリスを見てみます。アバスチンやザーコリは使えません。この費用対効果の制度がしっかりと導入されていて、使えないと判断されました。(※そりゃあんまりだぜ、ということで、救済制度もあります)イギリスすごいね。
日本の国民皆保険では、お金のことは置いといて、効果のある薬は世に出すというのが基本。患者も限度額までしか払わなくてよい制度になっているから、あまり費用対効果を考えなくてもよい。でも、それでいいのかな、という議論が日本でも起こっています。このシンポジウム、さくえもんも見たかったですよ。

どうぞ~。



「第56回日本肺癌学会学術集会のトピックス」

シンポジウム6-肺癌新治療の費用対効果の参加報告書



■学会全体

会期:2015年11月26日(木)-28日(土)

会場:パシフィコ横浜

会長:弦間昭彦(日本医科大学)

テーマ:Bridge for Making History (伝統を受け継ぎ未来へつなぐ)



■報告シンポジウム(シンポジウム6:第2日目 15:55~17:55、第一会場)

肺癌新治療の費用対効果

座長:國頭英夫(日本赤十字社医療センター化学療法科)

   山中竹春(横浜市立大学大学院研究科臨床統計学)


演者1:なぜ治療コストを考えなければならないのか。

    國頭英夫(日本赤十字社医療センター化学療法科)(服装)

演者2:医療技術等の費用対効果の評価方法と応用

    福田敬(国立保健医療科学院医療・福祉サービス研究部)

演者3:日本の薬価基準制度と抗悪性腫瘍薬の薬価算定

    成川衛(北里大学大学院薬学研究科)

演者4:日本にも“financial toxicity”はあるのか?

    後藤悌(国立がん研究センター中央病院呼吸器内科)

演者5:あえて高価な治療のトライアルを行う合理性

瀬戸貴司(国立病院機構九州がんセンター呼吸器腫瘍科) (服装)




■報告メモ


1)画期的な新薬発売に先立ち初めて学会で討論

 医療者は、医療費に関係なく、患者にとっての最善の医療を施す。それでいて、無駄のない医療を運営できるようにする。そのための学問が、医療経済学のスタートだった。

 医療の費用対効果が重要視されるようになり、その評価の方法も確立されていった。しかし分子生物学の進展に伴う遺伝子診断治療、CT、MRI等の診断機器の登場、コンピュータの導入よる創薬等、加速度的な医学の進歩に対して、旧来の評価法では、対処できなくなっているのかもしれない。

第56回日本肺癌学会学術集会(11月26~28日)のシンポジウム「肺癌新治療の費用対効果」では、高騰する医療費に見合った治療が行われているかどうかを臨床の場ではどう判断すればよいかが、話し合われた。



2)治る医療の裏表―治るとお金がかかる

分子標的薬の登場、近年の抗がん剤の進展は、目を見張るものがある。がんは本格的な薬物療法の時代を迎えている。薬でコントロールできるがん種が増えている。

 免疫チェックポイント阻害薬ニボルマブが、メラノーマに続いて、進行性非小細胞肺がんに対しても、効能追加承認申請中である。ニボルマブは、固形がんにおいて、血液がんにおける骨髄移植と同等の効果があるとの研究があるように、現在最も期待されている抗がん剤だが、1回の治療費が100万円を超えてしまう。適応対象になる患者数から類推すると、ニボルマムの非小細胞肺がん患者への投与がはじまると、肺がんの年間医療費は、新たに1兆円が必要となる。しかも長期にわたって服用する患者が増えることが予想されることから、治療費はさらに増え続ける。



3)100%確実な医療費破綻を放置している日本に学会側から提言

 「無効な治療は行わない。同じ効果であれば安上がりの治療法を選ぶ。医学的興味のみで高コストの治療の研究の治療を行わない」。このことを確認するためにシンポジウムをもったと、座長の國頭英夫(日赤医療センター)は語る。

 「国民皆保険制度に、高額医療費の公的負担制度があり、諸外国に比べると患者の個人負担は安いとも言える。医療者にとっても、科学的根拠や経験に基づき最善の治療をためらうことなく提案できる。臨床の場ではウイン・ウインの関係となるが、社会としての負担は、将来の世代が身代わりになって負担できる金額をこえると予想される。これでは、いずれ国家財政が成り立たなくなり、破産する」とシンポジストの一人、国立がん研究センターの後藤悌は述べた。

 「臨床試験から得られた臨床評価に見合った大規模な薬価修正が必要」と瀬戸貴司(国立病院機構九州がんセンター)は、訴えた。



4)まとめ

 死の病として恐れられていたAIDSは、薬でコントロールできるようになった。薬の進歩は目覚ましく、やがて、多くのがんは、薬で治癒できる時代がくると期待もされている。日本には世界に冠たる国民皆保険制度があり、医療環境は世界一といわれる。ただ、時間がたつにつれ、制度疲労をおこし、今では実情にそぐわないものになっているところがある。医学・薬学の進歩を享受しながらも、抜本的解決策へのアクションが明日からでも必要となっている。5年、10年、15年と短・中・長期的な対策を国が国民に提示するとともに、国民も病気にならないからだ作りが求められている。

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