「もう治療法がありません」と言われたら・・・⑦

肺がん8年生MIRAさんが言われた


「もう治療法はありません。あとは緩和ケアに行ってください」


患者はこの言葉をどう受け止めたらいいのでしょう。

もっと言えば、「抗がん剤治療をやめる時」はいつか来る。そのときを患者はどう考えたらいいのか?
そんなことを考えようと始まったこの企画。


★MIRAさんのインタビューはこちら♪


ワンステップ!では3つの立場の方にご登場いただこうと考えました。

①   内科医
②   緩和ケア医
③   ピアサポート

前回までは①内科医、②緩和ケア医が登場。

今回は③です。ピアサポートの方に聞いてみたいと思います。

「ピアサポート」ってみなさん聞いたことあります?ネットで検索すると次のように出てきました。

 

ピアとは「仲間」という意味です。「ピアサポート」は、がんという病気を体験した人やその家族などが仲間(ピア)として「体験を共有し、共に考える」ことで、がん患者やその家族を支援することです。

 

簡単に言うと、「体験者が、患者の不安や悩みの相談にのってくれる」ということですね。この「体験者」ってのが肝。いわば同じ悩みを経験した人です。「それ、あるある。私もそう。」という会話ができる人。

 

でも患者なら誰でもピアサポーター(ピアサポートする人のこと)になれるわけではなく、各自治体やNPOなどが行っている研修・認定を受けると、名のれるようです。ちゃんと技術を学んでいるということね。

 

では、今回お話を伺った方をご紹介。「ピアサポートよこはま」の武岡ひとみさんです。

武岡さんはNPO法人キャンサーネットジャパン認定の乳がん体験者コーディネーターであり、東京都世田谷区のがん対策検討委員も務めている方。また治療中の乳がん患者でもあります。8年前に再発し、現在はホルモン療法を受けています。

「ピアサポートよこはま」は、平成22年に神奈川県との協働事業でスタートしました。メンバーは9名。開始以来5年間でおよそ850件の相談を受けたそうです。現在も電話相談・面談と活動を続けています。(活動詳細は最後に紹介しますね)

※ピアサポートよこはまのフェイスブックはこちら

 

どのような相談が多いのでしょうか?聞いてみました。

 

一番多いのは漠然とした不安ですね。

 

―――「漠然とした不安」ですか

 

はい。言葉にすると

「私どうなっちゃうんですかね?」

「この先の私の人生はどうなるんですか?」ですね。

正直、私は占い師じゃないし、宗教家じゃないし、それ質問されてもな…と思います。だけども最初にがんになった時に頭をよぎるのはそのことじゃないかなって。思い返すと自分自身もそういう疑問を抱いていた。でも漠然としているから医療の現場の問題にはならないんです。

 

―――確かにそれをお医者さんに聞いても、返ってこないですよね。

 

医療って検査をして具体的に診断が出て、それに対して具体的に何かを加えていくという、常に具体的なものですよね。漠然とした治療・・・効くか効かないかわからないですけどやってみますとか、そういうのないですよね。基本検査して診断名がでたうえで、そこに最も効果のある治療を加えていく。根拠と具体性を持ったものが医療の現場ですよね。

だけど、人間の心は常に漠然としてます。診断ができない。たぶん、いろいろな不安が重なりあっている状態だと思う。治療のことはどうなるんだろう?子供のことはどうなるんだろう?お金はどれくらいかかって、私は髪が抜けるの?カツラかぶるの?どうすんのって、いっぺんにそれがボンって。だから、第一声が「私の人生はこれからどうなるんでしょうか?」になる。これが1番 多い質問です。

 

―――そういう時はどう答えますか?

 

紐解きます。ひとつひとつ。

最初20分ぐらい、ひたすら漠然とした不安を聞くんです。先生に気持ちは伝えられているんですかとか、一番お辛いことは何ですかとか、聞きながらね。だから時間はかかります。初回では1時間はみています。そして、その中で一番何を長く話していたのかなとか、その人の感情がいつ一番高かったかなとか、そこをつかむんです。たぶんそれが1番大きな不安なんだろうなと。同時に、一番大きな不安を取り除くには、一番小さな不安から取り除いたほうがいいのか?それともまず一番大きなところからなのか?も感じ取っていくんです。

 

これは、世に聞くあれじゃないですか・・・「傾聴」ですよ。徹底的に聞いて、相手を理解していくわけですよね。で、言葉にしていく。今何に対して不安なのか?戸惑っているのか?怒っているのか?を具体的な言葉に置き換えていくことで相談者自身で気づいていく。ピアサポーターはそのお手伝い。どうすべきかなど、意見はしない。

 

今度は、2番目に多い質問はどういうものか、聞いてみました。

 

副作用です。抗がん剤治療をやっている人の副作用に関してのことが多いです。

「いつまで続くのか?」とか「このあとどうなっちゃうんだろう?」とか、初めて経験することだから不安ですよね

 

―――でも副作用に関してならお医者さんに聞けば答えてくれます。これは今からひどくなるんですかとか?しびれがあればそれは徐々に減るんですかとかそれは答えてくれますよね。それでは解消されないものということでしょうか?

 

はいそうです。例えば皮膚が痒いと言って軟膏を処方されました。それを塗っていても、「じゃあこれは、治るんですかね?」と聞かれてもわからないですよね。そういうことは体質みんな違うから、それぞれ違うわけで。でもそれが気になって気になってしょうがない。ずっと肌カサカサなんですよって。

 

―――ああ!なります。気になって気になって前に行かないときあります。

 

だからその時に、自分もそういえば経験したな。自分も気になって気になって一日中気にしてたってことを思い出すんです。そして、あーそうですね、私もそうでした。というと、あ、そうでした?どんなだったんですか?ってどんなくらいで良くなって来ましたかって話が続いていくんです。私の場合ですけれども、処方された薬はこれこれという薬でしたとか、でもそれよりも普通の保湿クリームのほうが効きましたとか。

 

こうしていると、別に問題は解決していなくても、相談しにきた方の気持ちはだんだんと落ち着いていくそうです。

 


むむむむ!

今、素朴な疑問として、どんな質問多いのですか?と聞いたわけですが、ピアサポートとは何なのか?その核心までお話してくださった気がします。そうですよね。

そういえば、ピアサポートよこはまのリピート率は60%なんですって。2回3回と利用する。また2ヶ月に一回は勉強会を開いているそうです。その間にあった相談をメンバーで共有していく。○○な質問があった。それに対して○○と答えた。その話を聞いて、メンバーは自分ならどういう言い方をするのかどうか考えてくそう。だからマニュアルはないそうです。

 

さて、では本題です。

「もう治療法はありません。あとは緩和ケアに行ってください」

この言葉を投げかけられた患者さんが相談に来ることがあるのでしょうか?

また、あるのなら、どう答えているのでしょう?聞いてみました。

 

「もう治療法はありません」と言われてしまったという相談は、けっこうありますよ。ありますね。そのときはやはり話を聞くことから始めます。

 
武岡さんがその活動の中で出会ったのは、19件。


ここで大事なことは、ピアサポートは医療ではないので、主治医の言うことが正しいのか間違っているのかの判断はしません。患者さんが主治医の意見に納得しているか?を探っていきます。相談にこられる段階では、患者さんはまだ不安、戸惑い、怒り、悲しみ…さまざまな感情があふれている状態にいます。その患者さんが、医師の言ったことに納得しているのか、していないのか?本当はどうしたいのか?ご自身で確認できるように一緒にゆれながら探していくんです。

 

「この問題は本人が納得しているのか?」それが肝。

 

納得していないのであれば、腫瘍内科医へのセカンドオピニオンをすすめているそうです。やはり専門家にきちんとした説明を受けることが納得への早道だといいます。

 

そして、この質問がくると必ず確かめるポイントもあるそうです。

 

一つ目。

緩和ケアのイメージに誤解があればそこは説明していくそう。けっして「最期」ではないこと。そこで体力を戻して、治療に戻ることもあることを伝えていくそうです。前回お話を聞いた緩和ケアの高橋先生と同じですね。

 

二つ目。

聞いていく中で、相談している方が専門病院にかかっているかどうかを判断します。実は専門家に診てもらっていない患者さんはけっこういるんです。だからまずそこを判断して、腫瘍内科医のセカンドオピニオンを勧めています。

 

これは、ピアサポートが患者の心を支えるだけでなく、患者の権利を守ることも仕事と考えているためだそうです。

 

今回はここまで。

あと2回続きます。

次回は・・・

武岡さんのインタビューでは、ここに収まりきれない、たくさんの興味深いお話がありました。それをご紹介します。

 

3回目は・・・

納得して帰られた方が3人いるそうです。そのお話を聞きました。