「もう治療法がありません」と言われたら…②

①と②同時アップです。①からどうぞ。


では・・・

医師は「抗がん剤を止めよう」という提案をするとき、どのようなやり方がいいと考えているのでしょうか?

勝俣先生のブログを拝見すると、実はこの問いに関する答えは具体的に書かれていません。

ただ、そのヒントとなる3つのことが書かれています。

①   医師の姿勢
②   タイミング
③   チームで行う。

 

まず①の「医師の姿勢」について(またブログを抜粋します)

「抗がん剤をやらない選択」を患者さんと話し合う際に、最も大切なことは、我々治療に関わる医者が、「抗がん剤はせずとも、絶対に見放しません」というメッセージをいかにうまく届けるか、ということだと思います。

大事なことは、医師が自ら、患者さんと一緒に悩み、苦しみ、一緒に考え、患者さんの気持ちを支えていくということが大切であると思っています。本当に大切なことは、治療を続けるかどうか?ということではなくて、いかに、生活の質を保っていくか?ということであると思います。生活の質とは、個人個人違うものです。生活の質とは、その人が大切にしたいこと、大事にしたいことであると思います。生活の質を保つために、治療をするかを決めればよいのですから、大切にしたい生活の質が何か?を医療者は聞いておく必要があると思います。抗がん剤をすることが目標ではなく、生活の質を保つことが目標だからです。


 

続いて②「タイミング」について

話すタイミングも重要、と勝俣医師は考えています。そのタイミングとは?

結論を先に書きますが、「抗がん剤治療早期」とのこと。
そのときにいきなり「抗がん剤をやめるときが来る」と話すわけではなく、「緩和ケアという治療がある」ことを話し始めることがよいとのことです。 そして、できれば併診して緩和ケアにかかるのがよい、ともいいます。

どういうことでしょうか?

2010年にでたアメリカの論文に答えはあります。治療早期に緩和ケアを併診すると、どんなことが起こるか調べました。すると・・・

・患者のQOLがあがった
・最期まで抗がん剤をする率が低くなった(デメリットが多い治療をしないという意味)
・薬一個分、生存期間が延びた

これを見ると、いいこと尽くしですね。患者としては、「緩和ケア」=「もうすぐ最期」というイメージがどうしてもあります。「怖い」というイメージ。ところが、この論文の内容はそういうことではないようです。「ケア」というよりも「治療」として、患者にどんな利益があるのかが書かれてある感じです。「これ受けたい」と素直に思います。

勝俣医師はこの論文を根拠に、次のように書いています

最近では、緩和ケアは、状況が悪くなってきてからするものではなく、早期の段階から導入することが勧められています。

緩和ケアについて話し合うことは、医師にとっても患者さんにとっても決して簡単なことではありません。しかし、積極的治療を行う前の患者さんが比較的元気な状況であれば、このような話し合いをすることは比較的しやすいのではないでしょうか。

実際、論文が出てからは、患者さんとお話がしやすくなったと思います。「緩和ケアにも治療効果があるので、抗がん剤をやめるということは、あきらめてしまうということではないのですよ。抗がん剤を無理に続けることが命を縮めることにもなるのです」というようなお話をすることもあります。


続いて③「チームで行う」について(また抜粋します)

アメリカでの話として出てきますが、この問題に関わるのは、腫瘍内科医、緩和ケアだけではないと書いています。

私が勉強に行ったダナファーバーがんセンターでは、ギアチェンジ(緩和ケアへの移行)にはオンコロジーナース(がん専門看護師)が中心的な役割をしていました。外来では医師一人に、オンコロジーナースが一人ついて、診療を一緒にやっています。

外来オンコロジーナースは、医師の診察の前に、一通り診察をして、医師の診察の後、処方、検査オーダーなどをこなしています。その上、「医師は治療方針を決めるのが仕事、患者さんを支え守るのは私たちの仕事。緩和ケアへの移行について時間をかけてやるのも私たちの仕事」と言っていました。

「腫瘍内科医の○○先生には、緩和ケアの話はできっこないので、私たちが責任をもってやっています。」とも言っていました。米国看護師のプロフェッショナリズムを見ました。チーム医療の秘訣は、お互いのプロフェッショナリズムを尊重することと思いました。


 

「腫瘍内科医の○○先生には、緩和ケアの話はできっこないので~」ってコメントが気合入ってます。

 

さて、まとめます。

テーマは「抗がん剤治療をやめるとき」を患者はどう考えればいいのか?でした。

まず「腫瘍内科医」はどう提案しようと考えているか?ということで伺ってみると・・・

・「抗がん剤治療をやめるとき」の基準は
 このまま続けると、効果がないばかりか副作用で状態が悪くなる時。
・「抗がん剤治療をやめよう」との提案はそもそも難しい。医療者は、試行錯誤している。
・緩和ケアの早期併診が進められている

などなどがわかりました。


 

勝俣先生、ありがとうございました。

詳細をもっと知りたいと言う方は

勝俣先生のブログがこちら。

がん診療UP TO DATEがこちらです。


次回は、抗がん剤治療をやめるときを「緩和ケア医」はどう考えているのか?です。

「もう治療法はありません。あとは緩和ケアに行ってください」と言われた患者を相手する医師です。どう患者に向き合っていくのでしょうか?