がんと仕事の両立⑤ 森田さんの場合

がんと仕事の両立⑤ 森田さんのお話です。

 

 


みなさん、こんにちは。富山肺がん患者会ふたばの森田と申します。
この度は、貴重な機会を頂いて、どうもありがとうございます。本日は、非正規職員の立場から、がんと就労の両立について私の体験をお話いたします。
よろしくお願いいたします。

 

 

本日お話する事です。
①自己紹介 私のプロフィール及びがんの病歴です。
②がん治療と仕事の両立についての体験
③まとめ

となります。

それではまず自己紹介をいたします。
氏名は森田裕子、患者本人で、初発は2013年2月末に肺腺がんステージⅢAと診断され、翌3月に開胸手術で右肺の下葉と中葉を切除、術後予防的抗がん剤治療を約3ヶ月間受けました。

暫く経過観察していましたが、2016年の3月に縦隔リンパ節に再発、右腸骨と両腎臓に転移が見つかりました。この時は、もう手術は出来ないとの事で、右腸骨については3月末から放射線治療を行い、奏効率は80%でした。引き続き、8月から抗がん剤治療の予定でしたが、ALK遺伝子変異が見つかり、分子標的薬の服薬に治療が変更になりました。アレセンサを飲み始めて2年5か月くらいになりますが、幸いまだ治療効果が続き、日常生活には殆ど支障がありません。


 

2018年4月から富山肺がん患者会ふたばの代表を務めておりますが、この3月末で代表は退く予定になっています。

次に、私の肺がん治療と仕事の両立について、病歴と絡めてお話いたします。


最初に肺がんが疑われた2013年1月は私は無職で、正確に言えば前年の2012年8月末に前職を辞めた事による雇用保険の受給期間中=求職中の事でした。  「求職者支援訓練」でパソコン関連の資格取得を目指す講座を受講していました。

元々、夫の会社の配偶者手当支給要件の関係で年収103万円未満の範囲で働いていて、次の働き先も一日5~6時間程度の事務職パートで探すつもりでした。
 

肺がんと診断された事で、予定が狂ってしまいましたが、取り合えず必要な求職活動は全うして雇用保険が満額支給される様にしました。
通院による抗がん剤治療が始まって副作用で体調がかなり悪かったですが、タクシーでハローワークに通い、無事に求職活動を終える事が出来ました。

 

就活は、抗がん剤の副作用が抜けてから本格的に始める事に頭を切り替えて、
9月ごろからハローワークに通い始めました。
 

障がい者雇用枠の様な「がん患者(体験者)」枠は無いので、一般求人から条件に合う企業を探さないといけません。また、定期的な通院をするので、職員数が少ない会社では休みにくいと思い、求人理由が「退職による補充」ではなく、「増員」のところを探しました。

 

また、身体に無理がない様に「週3日勤務とか、一日5時間程度とか、短時間の勤務から始める方が良いのではないか。仕事をする上で、出来ることと出来ない事を明確にする方が良い」とのアドバイスを頂きました。自分に出来る事は資格を持っているパソコンスキルを使った事務処理、出来ない事は接客、力仕事、神経を使う様な細かい作業、遠距離通勤…と、事務職には拘らず軽作業も選択肢に入れて、とにかく採用条件優先で就職先を探す事にしました。

10月頭に薬品卸会社が業務委託している総合病院の薬剤部での補助の仕事がヒットして紹介してもらいました。
面接の際に、肺がんで経過観察中と伝えたところ、やはり大変驚かれた様子でしたが、無事に採用されました。

その職場は、残念ながら2016年に再発転移が判って結局退職しました。
仕事内容は入院患者さん向けの薬剤のピッキングと病棟へカートを使っての配達でした。薬のピッキングと言っても点滴薬などは一箱5㎏になるものもあり、腰に負担が掛かっていました。

右腸骨に転移していたので、看護師さんから腰に負担がかかる仕事は辞める方が良いとアドバイスされ、また仕事自体が業務委託で、事務など別の職種に変わる事が出来なかったので退職しました。

今はがんと判っても仕事は辞めない方が良いと云う時勢になってきていて、私自身も正社員の方はやはりなるべくなら退職はされない方が良いと思います。長期休暇や傷病手当などの会社の制度を利用出来ますし、社会保険料をご自分で払っておられるからこその社会保険制度も充実しているからです。

ですが、職種や職場の環境によっては仕事を続ける事が出来ない事もあるので、辞めざるを得ない事があるのも仕方無いかと思います。

今の仕事が続けられないと判断された場合は、ご自分の体調や治療に無理のない職場を探すのも良いかと思います。重要なのは、退職しても、ま現在の自分の状況に応じた新しい仕事に就けること、つまり再就職への道が拓けている事だと思います。

 

私の場合に戻りますが、ハローワークでは、通院で月1回程度休むと云う事を了承された職場を紹介して貰いました。なお、紹介の時点では、肺がん治療中の事は先方には伝えてはいませんでした。そちらで採用されるかどうか判らない時点では、個人情報保護の観点からも「持病がある」程度の情報のみで良いと思います。

 

今の職場は従業員30人程度の部品メーカーで、一日3時間で週5日の短時間勤務をしています。仕事は軽作業で、出荷の為の梱包材を作ったり配送ケースの洗浄や、その他の雑事などです。
面接の際に、初めて肺がん治療中の事を伝えて、やはり驚かれましたが、薬でコントロールが出来ていて、作業には支障ない事はしっかり話しました。
また、1ヶ月に1回程度、診察で仕事を休まないといけない事も伝えました。
人手不足の会社だからか、無事に採用されました。

肺がん治療中と承知して雇って貰えて、最初から通院の事も判っての採用だったので、気兼ねなく働く事が出来ています。もちろん、特に日常生活に支障が無いから働けているのも事実ですので、再就職の際は自分の体調を充分考慮する事が大事です。無理は禁物です。テレワーク等、自宅で出来る仕事を探すのも良いと思います。

私の病気については、面接時に人事担当者と現場の責任者に話しただけで特に同僚の人に改めて話してはいませんので、どれだけの従業員に私の病気の事が伝わっているかは判りませんが、昨年は肺がん患者会の代表として表に出る機会が結構あったので、それなりに伝わっているかとは思います。
 

自分の病気について、最低限自分の部署の人達には伝える方が良いとは思いますが、人づてに他の部署の人に伝わる可能性もありますので、難しい問題だと思います。

働きながら通院するのにハードルが高くなるのは、同僚の方の理解が得にくいのが一番かと思います。入院している時は「病人」として見られますが、退院して仕事復帰した途端に「治った人」と見られてしまい、治療の為に仕事を休んだり、遅刻や早退するのは「役得」の様に思われてしまう事がある様です。 
同僚の方がしわ寄せを受けたと感じられると、中々気持ち良く送り出しては貰えないと思います。

 

仕事とがんの両立はがん患者の立場から語られる事が多いですが、実はがん患者と一緒に働く人の問題でもあると思います。元気で働いておられる方に報いる様な制度、例えば皆勤手当や有給休暇の買い取りなどが充実していれば、治療に向かう同僚を気持ちよく送り出してくれるのではと期待します。

もちろん、がん患者の方も職場から理解を得られる様な努力は必要で、職場の方が知りたいのは、その治療がいつまで続くのか、どの程度仕事に支障が出るのかと云う事なので、治療方針が決まったら職場で共有して、例えば繁忙期に副作用が強い時期が来ない様に工夫するとか、1週間単位でも休日に副作用が出る様に治療日を調整するとか出来ます。

 

なので、医療者の方には、患者の勤務状況に沿って治療方針を決めて頂きたいと思います。また実際に働き始めると、体調の変化も出てくるので、息苦しいとか胸の痛み等に緩和ケアを受けられる様に繋いで貰うのも有効かと思います。
 

ドクターに様々な業種について詳しくなって頂きたいのは山々ですが、そこまで求めるのは現実には無理だと思いますので、職場の産業医との連携や、病院のがん相談支援センターに仕事についての相談があった場合の事例を蓄積して、個人情報保護から逸脱しない範囲でデータベースとして活かして頂ければと思います。
 

また、今回の体験発表の様に、仕事と治療について両立されている方の体験談を医療者を対象に行うのも、状況を理解して頂くのに役立つと思います。

最後にまとめです。
仕事と治療の両立は、金銭的な面でも、「社会生活を送れている」と云う精神的な充実の点でも意義は大きいと思います。
現に働いている場合は、なるべく辞めなくて済む様に、使える制度は使い、またご自分の状況を職場に理解して貰う様に努める。
仕事しながらの治療が可能な様に、医療者と治療方針についてよく話し合い、
また現況も医療者に伝えて仕事についての理解を深めてもらう。
やむを得ず退職する場合も、自分の出来る事出来ない事を明確にして、無理の無い範囲で働ける職場に再就職する道もある。

私の話は以上です。ご清聴ありがとうございました。