聴覚障害者に対するがん支援④

<前回は・・・>

医療の現場で、手話通訳者がいないとき、ろう者が困っていることが見えてきました。そしてその原因は「ろう者と健聴者の認識のズレ」にある、というとこまででしたよね。

 

<今回は・・・>

「じゃあ、手話通訳者がいれば困らないの?」です。

 
そもそも、各自治体は依頼に応じて手話通訳派遣をする義務があります。行政の窓口などで手順を踏んでお願いすれば、手話通訳者は派遣される仕組みがあります。

聴覚障害者を支援する「聴障・医ネット」の平野先生は、手話通訳が当然必要としながらも、いくつかの問題点を挙げています。

 

①  プライバシーの問題
②  技量

 
<① プライバシーの問題>

ろう者と手話通訳者は同一地域で、一緒に活動していることが多く、その多くが顔見知りであること。このため、がんの治療などの深刻な通訳に関しては、特に避けたいと思っている場合がある。 あるろう者の発言につぎのようなものがありました。ろうの父親が胃ガンになったとき、手話通訳を依頼しなかったそうです。その理由は、重い病気の場合は顔見知りの手話通訳者だったら気まずい。かといって、見知らぬ通訳者の場合には、信用していいのかが疑問だと 思ったそうです。

 

皆川さんも・・・

通訳同伴で病院へ行くことで自分の病気の噂が流れるのを恐れて通訳依頼しないろう者もいます。当然通訳者は秘密守秘義務があるのですが。。。

 

 

 

<②    技量>

平野先生が伝え聞くところによると、診察時に、ろう者が医師に障害年金の申請をお願いした、という場面があったそうです。ところが、手話通訳者がいたにもかかわらず、なかなか伝わらない、という状態が起こったそうです。

(※障害年金・・・みなさんご存知ですか?がん患者も一定の条件を満たせば、もらえますよね。がん患者の「お金に関する困りごと」みたいなセミナーに行くと、必ず出てくる国の支援制度です。知らなかった方は、自分が該当するのか一度調べてみることをオススメします)

 

なんのことはない、患者(ろう者)と医師は障害年金のことを知っていたけども、手話通訳者は知らなかった、ということのようです。そりゃ、混乱が生じますね。

 

皆川さんは・・・

ろう者は自分の病状がひどくなるまで我慢しがちです。医師に自分の病状をうまく伝えられないというのもあります。痛みを言葉で伝えるのが難しいし、どのような痛みですかと聞かれてもどんな痛みかわからないしとにかく痛いことは痛いとしか。。。チクチク痛む、ズキズキ、ジンジン、ガンガン、ビリビリ、などなど日本語ではそのように使えますが。。。痛む所に痛いを手話で表して痛みの強さを顔の表情で出します。なので要するに通訳者がその手話をみてどのように伝えられるかその技術に左右されます。手話は日本語とは全く違った言語ですからその相互変換は通訳者の技量にもよります。信頼関係も大切です。なかなか難しいです。

 

 

さて、ここまでをまとめてみます

ろう者と医療者(健聴者)の関係において

▼手話通訳者がいなければ、当然コミュニケーションがうまくいかない。
▼手話通訳者がいても、なかなかうまくいかないケースもある。


でした。

 

 

では、行政はこの現状をどう打破しようとしているのでしょうか?

 

鳥取県では、日本で初めて「手話言語条例」が作られました。手話を言語として扱う条例ですから、今まで以上に手話が普及して手話を使う環境が整い、また通訳者の養成や確保ができるようになり、ろう者の社会参加にも繋がるということになります。

 

ちなみに、こちらでは、中心地にある病院に専従の手話通訳者を雇い入れたそうです。

派遣ではなく、その病院専従の方がいれば、緊急の場合にも対応可能ですし、技量も自然と上がります。いい方法ですね。

 

私・さくえもんは神奈川県横浜市に住んでいます。こちらではどうでしょうか?

 

ちなみに神奈川県も手話言語条例をつくりました。いろいろお話してくれたのは、聴覚障害者情報提供施設の古川さん。横浜市から手話通訳者派遣を任されているところです。

横浜市の手話通訳者派遣事業の総数は平成25年度で9776件。

そのうち医療への派遣は4355件でした。約半数が医療の現場への派遣です。

鳥取県と違い、横浜市では、手話通訳者の派遣を充足させるような方向に動いているようです。手話通訳派遣を申し込まれたとき、どんなときでも対応できるように全力をあげていました。皆川さんの例にもありましたが、緊急時にはなかなか派遣が間に合わない、という現実があります。しかし、横浜市では「いのちに関わることは最優先」として、改善に取り込んでいます。例えば・・・

 

①  救急車を呼んだとき

みなさん、ろう者が救急車を呼ぶとき、どうするかご存知ですか。FAXかメールだそうです。そして横浜市の場合ですが、FAXには、通訳派遣チェック項目があります。救急車出動要請が聴覚障害者からである場合、手話通訳者をつけるシステムがあると言うことです。24時間対応。夜間は消防から登録している手話通訳者に直接連絡し手話通訳者派遣に応じるシステムだそうです。横浜市の取り組みは、かなり先進的な取り組みだそうですよ。

 
では実際にできているのでしょうか?またどれくらいの必要度があるのでしょうか。データを見てみたいところですが・・・ごめんなさい。まだ消防署に問い合わせ中です。もう少々お待ちください。

 

②  当日に頼んで、派遣して欲しいとき

皆川さんが実際に困っていた事例です。手話通訳派遣は予約制であり、7日前までに頼むシステムが普通です。そのため、緊急の場合は難しい、というのが基本姿勢です

<※通常の通訳派遣システムについて補足>

地方に行くにしたがって事前予約に時間がかかり、「2週間前に予約」とか、ある町では「一ヶ月前に予約」というシステムでした。それだと不便じゃないの?と思うかもしれませんが、「一ヶ月前に予約」という町では、今まで一件も依頼がないそうです。それぞれの地域の事情に合わせて、システムが構築されているのでしょう。

 

しかし、横浜市の場合は、気合が入っていました。

横浜市ももちろん予約制です。しかしながら、先ほど書いたとおり、「いのちに関わることは最優先」とし、その当日に派遣の依頼を受けても、答えるべく動くそうです。

ちなみに、「当日に頼んで、当日派遣して欲しいとき」という派遣数は平成25年度のデータで31件。前年は12件だったそうです。これは依頼に対してすべて応対した数字なのかどうか気になるところですが、そのデータはないそうです。

これをどう考えるか?

仮に300件依頼があり、派遣したのが31件ならば、その達成率は10%です。

あんまりたいしたことないな、と思います。しかし前年の3倍伸びてますけどね。

仮に31件の依頼があり、そのすべてに派遣したということでしたら、その達成率は100%です。すばらしいですね。さらに約1万件あるうちの31件に目を向けた。頻度は低くともその重要度を考え、実行に移しているということですから、すごいです。

 

でも、データがないのでわかりません。データが出るといいですね。

 

行政の目標は、

「ろう者とろう者以外の人が共生できる社会をつくる」

だそうです。

こちらがん患者でなにもできませんが、一社会人として応援いたします。

 

今回はここまで。

次回は・・・最終回です。

皆川さんの講演(8分ほど)をアップします。

画像でも、書き起こしでも、好きなほうを見てください。

一応、書いてきた認識のズレとか、そういうことが頭の隅にあると、講演がぐんと近くに感じられるといいです。