治療は迷わず治験一本の男 てるっちさん③

今回は、てるっちさん(40代)の3回目。
治療は迷わず治験一本の男

そもそも「治験」とは・・・

 

その効果や安全性を確認し、厚生労働省から薬としての承認を得ることを目的として行われる試験を「治験」といいます。

 

そもそも治験はどうすれば参加できるのでしょう?私・さくえもんの通う病院では「治験はやっていません」ということで、まったく判りません。

また、実験のイメージがあったり、効果があるのか疑問だったりもします

 

 

さて、キャッチフレーズそのまま、てるっちさんは、いつも「治験」を選んできました。その治療の経過から「治験」とはどういうものか、学んでみたいと思います。

ちなみに、てるっちさんの病院は、国立がん研究センター。多くの治験をやっている病院です。

 

 

 

―――最初の薬は?

 

治験。先生からこういうのがありますがどうですかと3つの治療を提示されたんです。

一つ目は「アリムタ+シスプラチン。」次は治験で「パクリタキセル+カルボプラチン+ABT861」あともうひとつは忘れちゃった。それで、じゃあ、治験でお願いしますと。

 

 

→インタビューからわかったこと①

薬の選択をお医者さんと話すとき、治験は普通に選択肢の一つとして出てくるもののようです。先生が患者の状態と、治験の条件を見て、チョイスして提示される、ということと思います。

 


 

→インタビューからわかったこと②

治験の薬の名前がABT861。薬として世に出る前の段階だからでしょうか、名前はついていなくて記号ということなのだと理解しました。

 

 

治験は6クール続けました。そのあと、パクリタキセルとカルボプラチンはやめて、治験薬だけ(ABT861)を飲み続けました。最初の6ヶ月ぐらいは入退院を繰り返して、その後は治験薬が飲み薬だったから外来でやりました。

 

副作用は、だるかったのと、白血球が下がりました。その期間は外に出なかったですね。治験薬では水ぶくれができました。皮がむけるんだけども、で白血球が下がってるじゃない。免疫力が下がっているからだから回復しないんだよね。だから大変でした。足の裏にでかいのはいくつもできたんです。それで痛くてね。僕はなったことはないんだけれども、痛風ってあるじゃない、それと同じじゃないかなと思っています。

 

 

―――効果は?

 

 


原発が4cm。その周りにいくつか小さいものがあったんだけれども、実は形は変わらなかったんです。でも中身が空洞化しました。そして、そのままおさえてくれていた。だからそれをずっと飲み続けていたんだよね。治験薬は、効かなくなるまでやるということでした。ところが、製薬会社の方が研究をやめたんです。それで終わりました。1年8ヶ月ぐらい続きました。

 

 

→インタビューからわかったこと③

薬が効いていても、やめる場合がある。

てるっちさんが服用したABT861は、治験の結果、薬として開発しない、ということになりました。そのため、薬自体の製造が終わり、てるっちさんの治験参加も終わったというわけです。

 


個別にてるっちさんだけをみると、効果が継続していました。薬1・2年分あげて、続けらればいいのに・・・と思いますが、治験の目的は薬の承認です。しょうがないのかもしれないですね。個別の人間の利益と未来の利益、そのバランスをどこかでとるということなんだと理解しました。こういう細部にこそ現れるのだと思います。

 

 

 


で次に何をやるかということになりました。

そして TS-1とアリムタの話がありました。今まで効いていたのは薬の飲み薬だったし、その場合は自分で休薬ができるでしょ。点滴は一度うってしまうと、休薬も何もないじゃない。飲み薬だったらやめることもできる。今日飲まないおこうとか、そういうのができるから TS-1にしたんです。

 

 

―――飲み薬だから副作用がつらければ飲まなければいい。飲み薬の特徴ですよね。お医者さんからそういう指示を受けたのですか?

 

 

そうそう。辛かったら休んでいいからねって。

 

 

 

次の薬・TS-1も効いてくれました。

ところが、一年ほどして、腫瘍マーカーが少しずつ上がり、腫瘍も大きくなりはじめます。
TS-1の次の薬を何にするか、医師と相談が始まりました。てるっちさんが要望したのは、「治験」でした。

てるっちさんは医師に強く「治験」を求めたといいます。

なぜ?

 

 

自分のためになり、人のためになるんだ。

治験のコーディネーターの人っていたんだけれども、「なぜ患者さんは10年先の薬(治験)をやってくれないんだろう?やっぱり拒否にする人がいる。嫌だ。実験みたいなことはしたくない」と。考えてみればそういう面もあります。

でも治験は10年先の薬を使っているってことです。ましてや将来のためになるんです。と思った時にこれはいい薬じゃないかと。

 

もう一つがその薬が承認されれば、歴史に残るのではないか。これはどういうことかというと、イレッサ、これはがんセンターで初めて使用したんだよね。そして、最初の患者さんがイレッサを学会で発表した日に亡くなったんです。そういうふうな 歴史的なものとしても残る。だったらそれはいいじゃん、と。

 
 

 

―――ん?それは何がいいんですか?

 

 
 

だって歴史に残るじゃん。てるっちは治験をやったということが残る。そしてそれが人のためになるわけでしょう。というふうに考えたらそんないい薬ないじゃん、と。じゃあ治験をやろうと思った。

 
 

 

―――なるほど。イレッサを初めに使った人は、イレッサがちゃんと認可されて、人の役に立った。それを誇りに思う、ということですね。わかりました。

 

 
 

あと TS-1は処方されるのに2万円ぐらいかかる。お金が高い。でも治験だとお金がでるでしょう。

 
 

 

―――「治験」は交通費が出るんでしたよね

 

 

そう。1回行くと7000円出る。外来で7000円。そして入院すると1回の計算になるから、そこでも7000円。例えば最初の月に4回外来したとすれば7000円×4で28000円出る。

 

 

自分のためになる。

人のためにもなる。

交通費が出る。

そしたら治験の方がいいじゃんと思った。で、治験でいいのがあればそっちにしたいと言ったんです。治験をやりましょうと。先生、治験、治験、みたいな。

 

 

 

―――僕は人のために治療しているという感覚はなくて、自分のために治療をしていると思っている。結果として、人の役にたつという意味合いならしっくりくる。
てるっちさん、そもそも治験が自分のためになるかどうかはわからないのでは?