白石さんの講演 11月19日東京・日本肺癌学会市民公開講座より その2
手術、免疫チェックポイント阻害剤へと進んでいきます。
そして2015年、転移していた肝臓とリンパのところが検査上見えない、今なら手術ができる、と言われ、左上葉を切除しました。
抗がん剤もよく効き手術もでき、ステージ4からもしかしたら寛解が見えてくるなんて、こんなにラッキーでいいのか申し訳ない気持ちもありましたが、肺がん仲間の希望の存在になれたらいいな、と思いました。
ところが手術から3か月後のPET検査で以前転移していた肝臓にまた影が現れてしまいました。すごろくで上がりが見えてたのに振り出しに戻ってしまったような感じでした。最初にがんだとわかったときより落ち込んだかもしれません。でもやっぱりなっちゃったものはしょうがない!振り出しにもどってまた抗がん剤治療。以前長く効いてくれた薬で維持療法。前にもやっていた治療なので慣れていました。1年位続きました。
長く効いてくれた薬にもついに耐性ができ次の薬。次は話題の免疫のお薬です。期待と副作用への不安、どちらも大きかったです。
この薬は今年の1月から3月に6回点滴しました。最初は全く副作用がなく点滴したことも忘れるくらいだったのですが、6回目の点滴の後、頭痛やだるさが続き副腎障害という副作用が出てしまいました。副腎がやられてステロイド剤をずっと飲まなくてはならなくなり、肝心ながんの治療も中断していたのですが、6月に撮ったCTで奇跡的に影が薄くなっているのがわかり、経過観察となりました。
よかった~と思ったのも束の間、7月に下痢が止まらなくなり大腸炎で入院。
点滴をストップしていても効果も副作用も出てきていました。
副作用も落ち着いたところで先月脳転移が見つかりました。さすがにショックでした。放射線治療のため入院。実はまだ退院したばかりです。さらに肝臓の転移も大きくなっていて、来月から抗がん剤治療を再開することになっています。
7年近くの間いろいろな治療をしてきました。怖いと思っていたがんやがん治療。これからも治療はエンドレスで続きます。
落ち込むこともありますが、でもしっかり前を向いて、病人にはならずに、これからも普通に過ごしていきたいと思っています。
続いて私のがんとの付き合い方です
がんであることを回りに隠さない
私はがんであることを回りに隠していません。わざわざ遠くの友人に知らせるようなことはしませんが、日頃関わりのある方には伝えてあります。誰もが社会の中で多くの方との関わりを持って生活しています。がんがわかって治療のためにお休みしたり、できなくなってしまうことがでてきます。初めにお話ししたように負のイメージが大きいがんですから、話したくない、隠しておきたいという気持ちになってしまうことも多いと思います。でも隠すためには何かほかの理由を考えたりつじつまを合わせたりしなくてはなりません。病気が分ってすぐに入院を控え、私は考える余裕もなく正直に伝えました。
がんであることをカミングアウトして、イヤな思いをすることがあるかもしれません。私も少しだけありました。でもほとんどの友人は温かく見守ってくれました。周りに黙っている方もいらっしゃると思いますが、誰かひとりでもわかってくれる方がそばにいて隠さずに話ができたら、きっと気持ちが楽になると思います。
次にがんへの声かけ。
私の場合、こんなことがありました。最初の4クールの入院の合間、家でピアノを弾いていて心から「楽しい!」と思いました。治療に必死になっていて忘れていた楽しさを思い出しました。こんなに楽しいことができなくなったら悲しいし悔しい、ずっと楽器を弾けるように元気でいたい!その時思わずがんに向かって「ずっとこうして楽しいことをしていたい。だからおとなしくいい子にしていてね」と話しかけていました。
がん哲学外来の樋野興夫(ひのおきお)先生の本に「がんは我が家の不良息子」という言葉があります。がんだって元は自分の細胞で、外から入ってきた悪者ではないのです。病気と闘うことばかりに必死になるのでなく、うまく声かけして、気持ちをコントロールして付き合っていくことも大切です。もしかしたら不良息子がいい子に戻ってくれるかもしれません。
(「元のいい子に戻ってね」と言い聞かせてください)