白石さんの講演 日本肺癌学会市民公開講座より その3
忘れる時間を持つ
楽しいことを夢中でしている時、他のことは頭に入って来ませんよね。そのような病気を忘れていられる時間はとても大切だと思います。私にとって夢中になれることは音楽です。
お仕事としてレッスンにも復帰しています。
それから趣味の音楽サークルである社会人のマンドリンクラブに所属していて、ギターパート、指揮者として参加しています。治療を続けながら毎年演奏会のステージに立つことを目標にしています。実は今年の演奏会は先週の日曜日。そう、放射線治療での入院のさなかです!本番の日に指揮者が入院中という大ピンチです。いくら私が出たいと思ってもドクターストップがかかったら出られません。そんな最悪のケースも想定しました。でも先生も私の「出たい」という気持ちを考えて、しっかりサポートして下さり、無事外泊許可をいただき演奏会に出ることができました。メンバーも治療で休んでばかりの、最後までハラハラさせ通しだった私を温かく迎えてくれました。
多くの方に支えられてこのステージに立っている、当たり前と思っていたことができる喜び、感動。今年は格別でした。演奏にも力が入り本当にいい演奏会になりました。
私にとって病気を忘れられるくらい夢中になれるものは音楽ですが、皆さんにもそれぞれ何かコレ!というものがあると思います。がんだからって何もできなくなるわけではないのです。
がんのことより好きなことを考える時間を増やしてみませんか?
がん患者だからできることをやる
がん患者は何もできなくなる、というイメージがありましたが、そんなことはありません。がん患者だからこそできることがあります。
患者会やがん患者支援イベントであるリレーフォーライフに参加して他の患者さんと知り合えることもがんにならなければできなかったことです。
いつの間にか患者歴が長くなり、後輩患者さんから相談を受けることがあります。そんな時にどうお話ししたらいいのか知りたくてピアサポーター養成研修を受けました。私が経験したことが少しでも役に立つなら、がんになったことも悪いことばかりではないのかな、と思います。
最後に日本肺がん患者連絡会についてお話しします。
おととしの11月、日本肺がん学会学術集会で全国6つの肺がん患者会の代表が集まり発足しました。いまでは11の患者会に増え、患者会どおし横のつながりを持ち、情報を共有し、患者としての声をあげ医療者と協力してよりよい医療を目指しています。
日本肺がん患者会連絡会ではこの3つの柱を掲げています。
アドボカシー
患者の権利を支援する活動のことをいいます。
受動喫煙防止法や新薬の承認について要望書を提出して国へ働きかけています。
患者力アップ
すべて病院にお任せするのでなく、自分の症状、つらさ、こうしたいという希望を医療者に伝え、話し合って納得した治療を受ける。患者自身が主役です。
仲間つくり
おしゃべり会やサロンを開催して病気のことやその他なんでも話をします。同じ病気の仲間がいる、自分ひとりではない。安心できるし心強いです。
このような集まりに参加するのはちょっと・・・と思っている方もぜひお近くの患者会の会員になって下さい。色々な情報を手に入れることができ、患者会活動を通して未来の患者さんのために私たちの力で社会や医療を変えていくことができるのです。
ステージ4という絶望的な状態でスタートした私のがんとの共存生活も7年近く経とうとしています。「あなたを見ているとがんになっても大丈夫って気がする」と言われたくらい元気に過ごしてきました。
先月の末に見つかった脳転移。放射線治療が終わったところで、正直これから先どうなるのか不安です。来月からまた抗がん剤も始まるし、病院とも病気とも縁が切れません。
でも今までのように自分のがんとうまくつきあって行こう、前を向いて過ごしていこうと思っています。
今日のこの講演は自分自身への応援のように思えます。
がんだからといって何もできなくなってしまうわけではない。自分のできること、やりたいことを見つけて、未来に希望を持って今を大切に過ごすこと。当たり前のことですが、がんにならなかったら気づかなかったことかもしれません。
がんの悪いイメージを少しでも消して治療しながらも普通に過ごせる病気、共存できる病気、そのような見方ができるようになれば、がん患者の就労問題なども解決の方向に向かうかもしれません。
弱い立場である私たち患者も普通に生活できる社会に一歩でも近づけるように変わって行ったら・・・と願っています。
★特典映像!
白石さんの講演の1週間前、演奏会がありますした。撮ってきましたよ~。
アラジンのホールニューワールドです。