学会へ行こう!プロジェクト③

みなさん こんにちは。

今回は、Iさんからの感想文です。

ご家族が腺がん(EGFR変異あり)を患っています。分子標的薬が使用できるわけですが、悩みは、その使用の順番や耐性に関することです。EGFR変異ありの方なら、みんな同じ部分で悩みを抱きますよね。Iさんはそんな思いの元に感想文を書いてくれました。どうぞ~。なおALKに関しても触れられています。




1.  参加したワークショップ


l  長谷川さんのお誘いを受け、肺癌学会に初めて参加しました。仕事で平日は休めず、参加できたのは3日目だけでした。ワークショップ9の「分子標的薬耐性」、一般演題の「癌免疫」とポスター展に参加しました。この中から、ワークショップ9の内容を報告させて頂きます。家族が分子標的薬を使っているので、ぜひ聞きたいテーマでした。


l  ワークショップ9は、分子標的薬の効果測定方法の開発から新薬の効果の検証まで幅広い内容でした。簡単にまとめると、その目的は、「分子標的薬は、肺がん治療において画期的な効果をもたらす一方で、その後、耐性を迎えてしまう。その耐性の仕組みを調べたり、耐性に関する様々な観測方法を確立したりすることで、より効果的な治療や新薬の開発に繋げるもの。」ということだと思います。なお、患者やその家族にとって、私が重要と感じたポイントは、各発表の下線部分です。


l  発表後に、分子標的薬の耐性化の仕組みを、ネットで少し調べましたが、次の2つが参考になると思います。要は分子標的薬がEGFRに上手く嵌らなくなったり、別の経路ができたりして、癌細胞の増殖を促すシグナルが再度出始めるということ理解しました。2番目は専門的な論文ですが、図1と図3(ALKは図5)に耐性の仕組みが分り易くまとめられています。

http://gansupport.jp/article/drug/drug06/12626.html

http://www.jbsoc.or.jp/seika/wp-content/uploads/2014/01/85-06-12.pdf



2.発表内容

(お聞きした内容をなるべくそのまま記述していますが、何分、医師ではありませんので、正確ではないかもしれません。その点、お含みおき下さい。)




①近畿大学 米阪先生


l  第2世代のEGFR阻害薬アファチニブは、EGFRとHER2、3の変異を同時に阻害する点に特色がある。


l  耐性は、HER3とヘレゲリンの過剰発現が主な原因であることが分かっている。今回の研究の重要なポイントの1つは、第2世代の効果を測定するバイオマーカーとして、血中のヘレゲリンを計測する方法を確立したことであり、特許を取得する予定とのこと。


l  アファチニブとエルロチニブについて、ヘレゲリンにより効果を計測すると、両方とも低濃度から発現を抑制していることが確認出来た。他方、エルロチニブは、AKTとHER2の発現を制御するのだが、その後、増勢するのに対し、アファチニブの場合はこれが見られないという差異が確認された。つまり新しく開発した測定方法によると、アファチニブの方がエルロチニブより、耐性をより長く抑えることが出来るということ。



②金沢大学 南条先生


l  肺がん治療の進歩には目覚ましいものがあるが、その結果として、遠隔地転移が発生する事象が多くなっている。転移に対しては、手術や放射線治療による局所療法が有効だが、髄膜炎の場合には、まだ有効な治療が確立していない。


l  本研究では、髄膜炎に対する化学療法の効果を計測する方法として、特殊なマウスを使い、髄膜炎と類似した症状を発生するモデル(LMCマウスin vivoモデル)を確立した。


l  このモデルを使い、エルロチニブとAZD9291の比較を試みた。従来のモデル(皮下腫瘍モデル)では、両者に差がなかったが、LMCモデルでは、AZD9291の方が、より効果が見られた。


l  また、AZD9291の場合には、耐性後にも効果が継続する(リン酸化を抑制する)ことが確認された。つまり、AZD9291は、髄膜炎にも有効性が確認できたということ。



③中外製薬 増田先生


l  エルロチニブとベバシスマブの併用は、単剤に比べ効果がある(耐性を抑制出来る)と言われているが、そのメカニズムは分かっていない。本研究は、単剤と併用の比較を通して、耐性のメカニズムを考察するもの。


l  期間を、①単剤でも効果がある感受性期と、②単剤では耐性化が起こった耐性期の2つに分けて、観測した。感受性期においては、単剤、併用ともEGFRのリン酸化を抑制しているが、EGFR以外の下流シグナルにおいては、併用の方が、リン酸化をより強力に抑制することが確認された。


l  耐性期においては、単剤の場合、EGFRについては引き続きリン酸化を抑制しているが、下流シグナルでは抑制出来なくなるのに対し、併用では引き続き抑制され、TM790変異も出現していなかった。


l  単剤においては、VEGF濃度の上昇が確認され、これがバイパス経路となり、下流シグナルの耐性化を引き起こしたことが考察された。つまり、ベバシスマブを併用すると単剤では耐性を迎えた後も、耐性抑制効果が持続することを確認出来たということ。



④岡山大学 磯崎先生


l  ALKについては、クリロチニブとアレクチニブの2剤が利用出来るが、本研究はアレクチニブの耐性化プロセスを考察するもの。


l  初めに、セカンダリーミュテーション(2次変異)やMET遺伝子に着目したが、いずれも耐性化の明確な根拠は確認出来なかった。そこでMETのリガント(受容体に結合する物質)であるmRNAに注目した。その結果、腫瘍がHGFを発生させることで、耐性化に繋がっていることが分かった。


l  このHGFの上昇に対しては、MET阻害剤を適用する事が考えられるが、阻害剤としてクリロチニブが有効である。即ち、アレクチニブで耐性化した場合には、クリゾチニブが有効であるということであり、現在、治験の第2相が行われている。




3.感想


l  分子標的薬の適用がある場合、どの薬を選択するか、またどの順番で使うかは多くの患者が直面する問題です。これは、分子標的薬間の効果の直接的な比較に関する治験レベルのエビデンスが十分に無いことも理由の1つと言われています。発表内容は、実験によるものが多いとは言え、患者が薬剤の選択の際の参考になるものだと思いました。


l  特に、これから出る新薬については、使う可能性が高いにも関わらず、患者側の情報は医師と比べると制約されてしまうので、学会レベルの情報を拾っていくことが役に立つ局面もあるのではないかと思います。


l  今回の発表内容では、髄膜炎にAZD9291が有効である可能性が高かったり、アレクチニブの耐性に対して、クリロチニブが有効である可能性があり治験中であったりという情報は、患者側にも大変、有益な内容であると感じました。


l  なお、ランチオンセミナーに興味深い題目が、多かったのですが、製薬会社主催ということで、患者や家族は参加が出来なかったことは残念でした。ユーチューブ等で見ることが出来ると良いと思いました。