ニボルマブに関する要望書(補足説明)

みなさん、こんにちは。

前回の要望書に関して、わかりづらいところがあると思いました。今回はその補足です。


<要望書の趣旨>
ニボルマブの薬価が高額のため、入院治療すると、DPCという制度上、治療費の半分以上を各施設が負担しなければならないかも。

病院が赤字に陥るため、事実上、初回入院の治療が行えなくなる。ここを何とかして欲しい。


というものでした。


このDPCという制度、難しいですよね。オンコロさんがわかりやすく仕組みを書いています。★CLICK★



さて、今回の要望をもう少し詳しく説明します。

「新薬が出て、入院治療すると病院が赤字になる」問題は、過去にけっこう起こっています。いわゆる「高額な薬剤」だと、同じ問題が起こるわけです。そして、実は、それに対する対処の仕組みがあります。

→DPCが問題ならば、その薬の使用に関してはDPCを一時的にはずそう

というものです。実際に皮膚がん(メラノーマ)のニボルマブは、DPCの制度から外れています。


<メラノーマのニボルマブがDPCを外れる流れ>

この問題に関して対処するのは中医協(診療報酬とかを決めるところです)の総会です。そのなかで1年に4回(つまり3ヶ月に1回)、「DPCによる高額で新規の医薬品等への対応について」という課題で会議しています。

で、

平成26年9月2日  ニボルマブ(メラノーマ)の承認



平成27年11月19日 中医協総会にてDPCの制度からニボルマブをはずす

という流れでした。


承認から、DPCを外れるまでは、2ヵ月半かかっています。承認されても、病院が実際に使用を始めるのは、その1ヵ月後くらいです。それを考えると、「病院が赤字の期間は1ヶ月半くらい」でした。さらに希少がんのため、患者数もそれほど多くはありません。だからでしょうか、メラノーマのニボルマブ承認のときに、この問題が浮かぶことはありませんでした。


では、今回の肺がんの場合です。

肺がんのニボルマブに関しても、このような対処がおこなわれるのでしょうか?まず間違いなく行われるでしょう。なぜならば、同じ薬を使用しているメラノーマで起こっているからです。しかも肺がんの場合、投与量はメラノーマよりも多い。より高額になります。

ということで、DPCから外れるスケジュールは・・・


(仮)平成27年12月or平成28年1月  肺がんにニボルマブ承認



平成28年2月 中医協総会にて、DPCの制度からニボルマブをはずす


という感じです。

これだとほぼ同時。赤字の期間は短いですし、そんなに問題は大きくない気がします


ところが・・・

来年2月に会議が行われるはずなのですが、この会議が「開かれない」ことがわかりました。(※理由は診療報酬改定前年度の2月は会議を開催しない、という決まりから)

次の中医協の会議は4月だそうです。

つまり、仮に今月承認されると、およそ4ヶ月間、病院の赤字の期間が続くことになります。誰も悪意なく、ただ、承認のタイミングの問題でドラッグ・ラグが起こるかもというわけです。



さらに。

扁平上皮がんだけでなく、腺がんへの承認もされたら、その患者数はメラノーマと違います。肺がんの年間死亡数は7万5千人ですから、単純にその数以上の患者が年間使用することになるでしょう。


「4ヶ月に及ぶ制度上の赤字」

「投与数は年間、数万に及ぶかもしれない」

これらの仮想定もあり、要望書は、

「病院が赤字に陥るため、事実上、初回入院の治療が行えなくなるかも。」と書かれました。



<入院が難しいなら、外来は・・・>

入院が赤字になって困るのならば、外来ではどうでしょう。外来にはDPCという制度はなく、薬を使用すれば、その分の料金が支払われます。最初から外来で投与すればいいのではないか、という考え方も出てきます。実際に、日本肺癌学会の声明文の中で、「主に外来で投与すると思われる」と滝口先生も書いていらっしゃいます。

しかしながら、ニボルマブの治験では比較的全身状態の良い人でしか投与されていないこと、医師があまり経験したことのない自己免疫関連の副作用がでること、そのため使用に注意を要する、とも書いています。


これらのことを総合して、要望書には

「初回治療は慎重な経過観察下、入院での施行も考慮すべき」

と書かれました。


ニボルマブは新薬です。治験で示されたその効果どおりの結果がもたらされる人もいるでしょう。逆にそうでない人もいる。残念ながら重篤な副作用が出る人もいるでしょう。医療者も、患者も、誰にもその結果はわかりません。だから、きちんと説明を受け、医師との信頼関係の中で納得して進みたい、そう考えます。



さて、この要望書。受け取った厚生労働省はどう考えているのでしょうか?

保険局医療課に電話で聞いてみました。いきなりの電話でしたが、とても真摯に対応していただきました。


まとめると以下のような答えです

・そもそもDPCは赤字も黒字もある制度だ。

・病院の機能を評価するシステムがあり、診療報酬が上乗せされる場合もある。

・つまり、病院全体がきちんと黒字をだしていれば、あるひとつの薬だけをとって、その薬が赤字になるから投与しないとはならないのではないか。


ということでした。


そうなのか・・・と素直に思います。懸念が懸念で終われば、要望書はまるめてごみ箱にポイですよ。でももし、懸念が現実に少しでも表れたならば、迅速に行動していただきたいなと思いました。それが今回の要望書の意味です。