LC-SCRUM その5
こんにちは。
LC-SCRUM情報その5です。
EGFR,ALKなしなし患者さんのための遺伝子スクリーニング、LC-SCRUM。
今回は、先生方が、実際にどのようなときにこの検査をするのか、どう考えているのかが伝わってくる文章を紹介します。
特定医療法人社団春日会 黒木記念病院 呼吸器内科の伊東先生が書いているブログです。そこから許可を得て、転載させていただきます。
※先生のブログ 大分での肺がん治療 はこちら
お医者さん向けブログであり、難しいです。でも最新情報満載ですよ!
※LC-SCRUMって何だっけ?という方はこちら!
★ドライバー遺伝子変異検検索 LC-SCRUM-JAPAN(4月24日)
最近になって病勢進行と判定してしまった患者さんがいて、二次治療をどうしようか悩んでいます。
壮年の女性、IV期の原発性肺腺癌で、シスプラチン+ペメトレキセド併用化学療法から、ペメトレキセド維持療法に進んでいました。
維持療法③コースを終えたところで、多発肺内転移、副腎転移が新たに見つかってしまいました。
非喫煙者の、比較的若年の女性でありながら、EGFR遺伝子変異、ALK遺伝子再構成もなく、どうも釈然としません。
このまま標準二次治療のドセタキセルに進むのが普通の流れですが、大分大学病院で調べなおして、LC-scrum Japanの枠組みで遺伝子変異を網羅的に調べるように画策しています。
なんらかの分子標的薬の適応があれば、治療効果もQoLも格段に違ってきます。
LC-scrum Japanは、私がお世話になっていた国立がん研究センター東病院の後藤功一先生、松本慎吾先生、土原一哉先生などが中心となって行っている、希少なドライバー遺伝子変異を次世代遺伝子シーケンサー等で検出する臨床研究です。もともとはRET遺伝子再構成陽性患者さんを見つけて、RET阻害活性のあるバンデタニブの臨床試験参加を目指す目的だったのですが、その他ROS1、BRAF,ERBB2,KRAS,NRAS,PIK3CA等々、網羅的に検索することになっているようです。
EGFR遺伝子変異陰性が確認された非小細胞肺癌患者さんが対象で、がん病巣の生検検体もしくは手術標本を凍結して国立がん研究センター東病院に送って検索していただく流れになっています。
幸いこの患者さんは原発巣、縦隔リンパ節いずれからも生検が可能な状態なため、遺伝子変異スクリーニングを目指すことにしました。
全国規模で行われている臨床研究ですが、大分県での窓口は大分大学医学部附属病院呼吸器外科の杉尾賢二教授が担当されています。
同じく呼吸器内科、腫瘍内科でも呼吸器外科と協力して検体提出できる体制が敷かれていると思いますので、参加を検討される方は自分が参加可能な条件を満たしているかどうか、担当医の先生やこれらの診療科に相談してみるとよろしいでしょう。
ちなみに、本臨床研究の研究機関は2016年3月までとされていますが、網羅的な遺伝子変異検索の対象となるのは研究開始から先着200名とされているようです。バンデタニブの臨床試験はもう患者登録が終わっているかも知れませんが、仮にそうであったにせよ、自分のがんがどの遺伝子変異によって支配されているのか知っておくことは、いずれ何かの役に立つのではないかと思います。
★LC-scrum Japan提出用の再生検(5月19日)
60代前半の女性、進行腺癌の患者さんです。
大分大学病院呼吸器・感染症内科でやっていただきました。
超音波内視鏡では間違いなく病巣にたどり着いたのですが、いかんせんそこで鉗子が開かず、満足な組織が取れませんでした。
ブラシ細胞診(バラバラになったがん細胞を採取)では腺がんが確認できたのですが、鉗子生検組織(ひとかたまりにつながったがん病巣)では確認できませんでした。
ブラシ細胞診検体ではLC-scrum Japanに提出できず、つまるところ網羅的な遺伝子変異解析はできません。
とりあえず、EGFR遺伝子変異のみ通常診療として検索してもらい、内視鏡下縦隔リンパ節生検を検討していただくことにしました。
患者さんにご負担をかけてしまい大変申し訳ないのですが、できればこの検査の意義を理解して、取り組んでいただきたいと思っています。
以上です。
先生、ありがとうございました。