『妊娠期がん』インタビュー ゆうさん その3

みなさんこんにちは!

前回に続き、『妊娠期がん』を経験されたゆうさんのインタビューその3です。
このインタビューは樋口宗孝基金の助成を受けて行われました


ゆうさんは肺がんではありませんが、妊娠がわかったとほぼ同時のタイミングで乳がんが見つかりました。

無事に出産し今、お子さんは6歳になっておられます。


では、その2からの続きです。

どうぞ~

*:そこに生まれたての赤ちゃんは大変ですね。

 

本当にきつかったです。胸のあたりを切っているから抱っこも痛いんですよ。スリングという、赤ちゃんを入れる袋みたいな道具に入れてたんですが、まともに抱っこができないから、ずっとそれに入れっぱなしにして抱っこして。

抗がん剤の副作用で激しい下痢になった時に、どうしようどうしようってオロオロしちゃいましたね。仕方なく、トイレに抱いて入ったりして(笑)

そんな状況なのに、夫が新生児と母親の愛着形成がその時期は大事とか言ってきて。もう「あなたは昼いないからいいけど、私日中辛いのに!」と不満をぶつけたのですが、結局いつもイライラしちゃってて。

外にも全然出たくなかったですしね。

公園に行って幸せそうな親子を見たくなかったんですよ。抗がん剤でまつげとかも抜けて、顔も浮腫んで、肌も荒れてて、禿げてるし、ウィッグだしでね。見た目もブスになっているし。それも辛かったですね。

 

でね、今思うと馬鹿げてるんですが、子どもに紙おむつでなくて、かなり手間のかかる布おむつを使ってたんですよ。

母乳もあげられないし、抱っこできる時間も短いから、その分手をかけなくては、なんて思い込んでて。ドセタキセルという抗がん剤の副作用で、手荒れもひどいのに、真冬に水でおむつ洗って。なんだか、そのくらいやらないといけないような気がしてて。引け目を感じてたんですかね、母乳育児とか抱っことかの、いわゆる育児に(笑)

 

本当は、赤ちゃんが産まれて、幸せで楽しい時期なのかもしれないのに、私は育児を楽しむ余裕が全くなかった。

それが今でも辛いというか、悲しいというか。何だろう。治療が無事終わって、子どもも元気で、それはすごく幸せなんだけど。

無いものねだりなのかもしれない。喜ばしいことだけれども、自分は素直に育児を楽しめなかった。複雑でうまく言い表せない気持ちです。

 

*:昼間はお子さんと二人きりで、夜は旦那さんも帰ってきて三人ですよね。

 

やっぱり、夜中のミルクなんかは体が辛くて起きられなかったので、夫に頼んで夜にやってもらいましたね。そのあたりはよく覚えてないのですが、今でもことあるごとに「あの時俺がやってた」と言うので、相当やってもらってたんだろうなと。

*:育児と治療はどれぐらいの期間続いたんですか?

 

術後抗がん剤、放射線治療があって、半年以上続きました。半年してちょうど放射線まで終わった時に保育園に入れたので。

最初は不安でしたが、地域の家庭支援センターの人が家に来てくれて話を聞いてくれたりしました。やっぱりね、私が抗がん剤をやっていて精神的に参っちゃったら元も子もないし、虐待とかになってしまったら困るので。やっぱりそれは病院の方から行政に連絡を入れてくれたりとか。保育園のことで、話をしに行ったりとか、保育園を探してくれたりとかそういうのを行政が積極的にやってくれてましたね。

 

*:そこから保育園に預けられて変わった感じですか?何ヶ月で職場に復帰されたんですか?

 

治療後、育休があと半年あったのですが、放射線が終わって1ヶ月で保育園が決まっちゃったから、そのまま職場に復帰しました。術後7ヶ月なので、子どもも7か月かそこらでしたね。
本当は放射線治療中に保育園に入りたかったんですけど、それが叶わなくて。保育園に入れてしまったら職場に復帰しないといけないじゃないですか。本当は、退院して抗がん剤が始まるころにはすぐに子どもを保育園に預けた方がいい、ということで行政の人と調整していたんですけど、やっぱり保育園の空きがなかったので。

でも治療が終わったので、また元の生活に、元ではないですね。家族の形態が、がんの手術以前とは全く違うことになったんで、とにかく忙しかったです。がんのことを意識することも少なくなってきました。

*:子どもとの生活が普通に始まっていましたけど、周りの方の反応はどうでしたか。

 

うーん、やっぱりね、経過を知っている人に、「本当に頑張ったね」とか、「命がけで産んだ子どもなんだから」と言われることがあるんですよ。子どもは、うちの子もよその子も同じで、うちだけ特別でもなんでもないと思うのだけど。

過大評価されるというのかな。自分としてはもう治療をして、出産と手術をして、終わったことだから、そう思うのかもしれない。

 

*:そうですね。

 

例えば、がんの経験を知っていて、もう子育てが終わってる人に、育児の愚痴なんかを言うと「命懸けで産んだんだから大事にしなくちゃ」なんて言われることもあるんですよ。

でも、子どもを感情的に叱ってしまうこともありますしね。みんなが育児に悩むように、私も悩むんですよね。だけど、あの時辛かったなと思うと、もっと優しくしなきゃとも思うんですけど。うーん、でもそれとこれとは違いますよね。

 

*:日常レベルの色んなことと人生の全体のことを考えるのとはちょっと違いますよね。

 

そうそう。たしかに、治療とお産を成し遂げたことは大きなことなんだけど、日常の些細な子どものことと、出産の時のことの2つが比べられるものではないし。

 

*:なんか周りの人は意味付けしたくなっちゃうんですかね。うまく言えないですけど。

 

もしこの経験をしたのが私ではなかったら、素直に「すげー!」って思いますよね。きっと。

「私、元気そうに見えるけど妊娠中にがんの治療したんだよ」ってもし誰かに言われたら「えーっ!貴重な経験ですね」って。

でも本当に、自分がその立場、30代でがんになるなんて当時はまったく思わなかったですしね。

あまり特別扱いもしてもらいたくないのですが、やっぱりすごいことなのかもしれません。

実はね、自分はとてもメンタルが弱かったのですよ。治療を終えてから「強いですね」と言われることがあるので、だんだん自分は屈強な精神の持ち主かと勘違いするようになったのか、本当にメンタルが強くなったような気がします。

 

それで思い出したんですが、夫がインフルエンザになった時に、関節痛がひどかったんですね。インフルエンザの関節痛って、私が投与していた抗がん剤の副作用にすごく似ているんですよ。なので夫に「抗がん剤ってこんな感じで、これが2~3日続くんだよ」って言ったら、「俺、絶対耐えられない。すごいね、よく乗り越えたね」って言ってて。あんまりそういうことに対して「すごい」とかいう人じゃないんだけど。

 

*:お子さんにご病気のことは伝えてらっしゃるんですか。

 

小さな時からさりげなく伝えていましたね。お腹にいる時にママ病気になったんだよって。
ある日子どもが「ママががんの時に生まれたからぼくは宝物なんだよね」って、突然言ったんです。誰かに言われたんですかね(笑)。

それから「この子がお腹にいる時に、がんの治療をしていたんですよ」と誰かに話していたら、息子が合いの手を入れるように「それで、あきらめてください。って言われちゃったんだよね!」なんてことも言ってました(笑)。たぶん、意味はよくわかってなと思うんですけど。

 

*:やっぱり、これだけの経験をすると価値観など変わりましたか?

 

人生が大きく変わったのはたしかです。

きっと、何年たっても、息子が誕生日を迎えるたびに、今日で手術から何年て思うんでしょうね。私の場合セットなので、忘れられるわけがない。毎年、今日で何年って。

普段はそんなに意識しているわけではないんですけどね。

でも最近、息子が保育園で嫌なことがあったみたいで、「ぼくなんか生まれてこなきゃよかった」とか「ぼくの気持ちがわかってくれないママなんか死んじゃえ」なんて言ったんです。さすがにその時は、泣きながら叱りました。

「ママ、どんな思いして産んだと思うの!」って。「ママ、本当に死んじゃうかもしれないって、お医者さんに言われたんだけど、それでも産みたいって言ったんだよ!」って。4~5歳の子がどこまで理解しているかわからないですけどね。

 

*:それは叱ってしまうのも無理ないと思います。

 

息子には、命の大切さを理解してほしいというか、周りの助けがたくさんあって、今自分がこうやって元気にしているんだということをわかってほしいんですよ。家族、医療、行政、友人、などなど、たくさんの手を借りることができたから、今ここにこうしている。自分一人の力で生きているわけではないですからね。自分を、そしてあらゆる命、自分の周りにあるもの、ことを大切にしてほしいです。スピリチュアルとか、きれいごとに聞こえるかもしれないけど、本当にそう思う。

あ、でも、気持ちが伝わってるのか、散らかしてるおもちゃを勝手に捨てると「おもちゃにも命があるんだよ!捨てたらかわいそうだよ!」と言っていつも叱られちゃうんですけどね(笑)。何も言い返せないんだよなぁ。

 

*:ご自身の今までを振り返って、どう思いますか?

 

がんの治療を終えたことは、私にとって特別なことでもなんでもなく、治療をして出産して育児をしただけというか。あれからもう何年か経ってるからかもしれませんが。

だけど、何気ない日常を「ふつう」に歩むことの幸せを、教えてくれのかもな、と思います。

そういう意味ではがんの経験に感謝…、いや、違うな。できれば、がんにはなりたくなかったです。やっぱり、どう考えても告知や治療や辛かった。それと引き換えに、得られた宝物もたくさんあるなと、今ではそんなふうに思いますね。

自分でしっかりと情報を集める…大事なことですね。

そして、納得できなければ、セカンドオピニオンを受ける!

その努力がなければ出会えなかった命!

これからも家族仲良く元気に過ごしていただきたいです。