第61回癌治療学会学術集会
2023年10月19日~21日
背景】
社会においてSDGsの観点で“多様性の尊重”が重視されている。
第4期がん対策基本計画でもその流れを受けて、全体目標に「誰一人取り残さない」という
文言が入りました。がん患者の多様性が尊重される社会に向けて動いています。
本研究の目的は、がん患者がどのような偏見や思い込みに苦しんでいるのか、社会がどのように変わってほしいのかを明らかにすることです。
【方法】
本研究に先立ち、ワークショップによりがん患者がこれまで受けた配慮の事例を調べた。その結果を踏まえ調査項目を作成し、オンラインアンケート調査を実施した。
対象は18歳以上のがん患者としWEBサイトやSNSを利用して周知した。
有効回答数は314
属性は以下のようになっています
50代半数 女性80% 肺がんと乳がんの患者が多いです
【結果】
がんに対する罹患前のイメージとそれが罹患後どう変化したか聞きました
見ていただきたいのは青の部分
がんになる前にイメージがあって、がん患者になったのちにそのイメージが弱ったもの
言い換えます
がんになる前に持っていたイメージは、世間が持っているがんのイメージともいえる。
それががんになって弱まるということは、世間が持っているがんの間違ったイメージそのもの、偏見や思い込みと言えるかもしれません。
その上位5つは
がん患者はいつも体調が悪い
がんになったら、これまでと同じ生活はもう送れない
がんの治療は苦痛の連続で大変だ
どんなに辛くても闘病するものだ
がんになったらそれまでの人生設計は諦めるものだ
がんに対する罹患前のイメージとその変化
続いて見ていただきたいのは薄いオレンジと濃いオレンジの部分
「罹患後にイメージを持つようになった」+ 「罹患後強まった」イメージです
言い換えます
先ほどと逆で、世間があまり認識していない、知られていないがんのイメージと言える。
より世間に知ってほしいイメージと言えるかもしれません
上位5つは
がん患者の話が役立つから教えてあげたい
がんは早期に発見しないと大変なことになる
いつまでも落ち込んでいたら治るものも治らない
見た目の変化を指摘してはいけない
がんを伝えるべき相手をアドバイスしてあげた方がよい
今度は、様々な配慮の中で、ネガティブ・不快に感じるものを聞いてみました、上位5つは・・・
会社や同僚に迷惑を掛けたらいけないので、就職は諦めるよう言われた
配偶者やこどもがかわいそうなので、結婚、妊娠、出産を諦めるよう言われた
会社や部下に迷惑を掛けたらいけないので、管理職は諦めるよう言われた
「子どもがいなくてよかった」など、もっと不幸ながん患者よりは良かったと励まされた
本人の知らないところで、がんであることを公開された
受けた配慮の中で、ポジティブ、ネガティブが拮抗するものです。
同じ配慮でも人によって感じ方が異なるもの。
「早くわかってよかった」と励まされた
「大丈夫?」と常に相手に確認された
「元気そうだね」「治って良かったね」となどと声をかけられた
サプリメントや遠方の有名神社のお札などを送られた
生活習慣を良くするようにアドバイスを受けた
受けた配慮を不快と感じた時の対応を聞いてみました
配慮した相手の考えと思い、あきらめた
我慢した
配慮した相手と距離を取るようにした
などが上位
相手に自分の意思を伝えたなど、現状変えようとする行為は少ない
他のがん患者さんに自分がした配慮
相手の判断を尊重した
詮索はせずに、黙って話を聞いた
気持ちを聞いて、真剣に向き合った
次は、他のがん患者さんに自分がした配慮の中で、自分がされたときにはネガティブと感じたもの抽出しました
連絡するとがん患者さんの負担になると考え、体調が回復するまで控えた
迷惑かもしれないので、こちらから連絡は取らなかった
少しでも長く家族と過ごさせてあげようと、付き合いを遠慮した
無理をしたり、いつもと違うことをするのは自重すべきと伝えた
がんを伝えるべき相手についてアドバイスした
【まとめ・考察】
・がん患者に対して、どのような偏見や思い込みがあるか、
またどのような配慮をがん患者がネガティブ・不快に感じるか、明らかになった。
そして、同じ配慮であっても、受け止め方に違いがあることもわかった。
社会への発信として「がん教育」の共生部分。どう接すると嬉しいか、悲しいかなどで応用できる
・不快な配慮を受けた場合の対応
不快であることを相手に伝える人は少なかったため、不快な配慮を押し付けられたままになっていたり、適切な配慮としてそのまま流布されていたりする可能性がある。
患者になると人に迷惑を掛けないようにしようという意識が強まるとされており、相手の善意を損なわないよう希望を伝えることを諦めてしまうことが、がん患者の多様性を見えないものとし、個々のあり様が尊重されず、スティグマを産む背景にあると考えられる。
ネクストアクションとして、不快と感じた配慮を受けた時の返し方、具体的にはアサーションを学ぶ
ワークショップなどがこの現状を変える一手になるのではないか
・社会ではなくがん患者自身が不快な配慮を行っていることもうかがえた
自分自身を振り返り、行動できる