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肺がん8年生 MIRAさん③

今回は肺がん8年生のMIRAさん(60代)の3回目です。

前回までは、MIRAさんが肺がんになってから2年間のことでした。今回はその後です。

MIRAさんはいわゆるスーパーレスポンダー(とってもよく効く人という意味です)です。しかし、そんなMIRAさんにもついに耐性がやってきました。イレッサが効き続けてくれた期間は4年強です。
その後のMIRAさんの選択は…

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★耐性はいつか来るものと考えていたMIRAさん。実際に自分に起こったときも、「さあ、次にいくぞ」という気持ちだったそうです。

イレッサ耐性の後に医師から提示されたのは、アリムタとシスプラチンの2剤を投与する方法でした。肺がんの中でも腺がんで、EGFR変異がなかったら、大体この組み合わせが第一選択薬とされています。また、イレッサが分子標的薬で新しい薬ならば、アリムタ・シスプラチンは殺細胞系ともいわれ、古いタイプの薬です。吐き気、悪寒、だるさ、などなど、いわゆる抗がん剤の一般的な副作用はこちらの薬によるものです。

 

イレッサ耐性から通常の抗がん剤へ…そのときの気持ちをMIRAさんはどのような思いだったのでしょうか?。

 

 

その時には、それしかないならもうそれでいいと開き直っていました。(引きこもりの)2年間すぎたら意外と開き直っていて、髪が抜けたら、カツラをかぶればいいやと思って。やってみたら、やっぱりすごく気持ち悪かったですね。

 

―――結構体重も落ちたんですか?

 

・・・鍋(糖質制限・一回目参照)の時の方が、体重が落ちました(笑)極端には減らなかったですが、やはり気持ち悪かったです。

 

 

★MIRAさんには大きな副作用はなく、なんとかやりすごせたようです。しかし、アリムタとシスプラチンはイレッサと比べると効いてはくれませんでした。6ヶ月ほどでした。

 

その後、MIRAさんはもう一度イレッサへのチャレンジを決めます。

イレッサの場合、一度効かなくなっても、時間を空けてもう一度使うことがあります。効果が出る場合があるためです。イレッサローテンションとかいうんですよね。

MIRAさんの場合、初回のイレッサは、4年もの期間効いてくれました。だから2回目も、それなりに効くはずだという期待がありました。

 

ところが・・・

2回目のイレッサはすぐに耐性がつきました。

効果があったのは3ヶ月ほど。

 

なぜ・・・?

 

MIRAさんにはその原因を服用のペースにあるのではないかと考えました。副作用がひどいため、3日に一回の服用としていたのです。

もし、1日1回の服用だったら、2日に1回の服用だったら、もっと長く効いたのではないか?そんな思いが頭をぐるぐるめぐります。

そもそも、主治医と服用のペースについては意見が割れたままでした。

 

 

イレッサでずっと副作用つき合ってきました。副作用が辛くて一時辞めたこともあるんです。でも、辞めるよりはちょっと QOL が下がっても副作用我慢して薬を続けたいという希望があった。そういう考えだったけども、そうできなかった。それで主治医と意見が合わなくて、困ったことがあります。

 

 

★積極的に治療を続けたいという患者の思いと、

副作用で生活ができなくなっては意味がない、と考える医師。

患者が「まだできる」といっても、医師から見ると「これ以上無理」ということがあるのでしょうか。難しいですね。

 

 

悩みの中にいても時間は過ぎていきます。がん治療って自分の気持ちに整理がつかなくても、決定して進まねばならないときがありますよね。MIRAさんも次の薬を決めねばなりません。

MIRAさんは医師からTS-1の提示を受け、次に進みました。

 

 



―――★―――★―――★―――★―――

 

 



★MIRAさんの治療は、これまでイレッサ、アリムタ・シスプラチン、2ndイレッサ、TS-1と進んできました。時は2007年から2013年に。気づけば、5年生存もクリアしていました。
 


しかし、ここで大きな問題に遭遇します。 

突然、医師からこう告げられました。

 

「もう治療法がありません。緩和ケアに言ってください」

 

 

―――いつごろ言われたんですか

 

TS-1の耐性ができたときです。私はまだ治療したい。緩和ケアには行きたくないと言ったんです。先生は、だめだと。先生はこれ以上治療がありませんと。病院の方針なんでしょう。イレッサ、アリムタ TS-1 3回やったら,出てくれということなんだと思って。その後は緩和ケアに行ってくれということと思います。私は、緩和ケアを勧められた時に頭に来てしまって、もうこの医者とは絶対にやっていけないとおもって・・・。

 

 

―――急に言われるんですか?前もって言われるんですか

 

急に、です。前もっては言われません。そして緩和ケアを紹介してくれるところに回されました。そのコーディネーターの方とお話しました。関東近郊の緩和ケアの一覧表があるんです。電車の路線図も書かれていたりします。自分の家の近くの病院もあって、そちらはどうですかと聞かれますが、私は全然わからない。その時私は行く気がないですから。ただ,円満に。喧嘩別れでなくてね。いつ何があるかわからないですからね。円満にここを出たいと思いましたから。行きます。紹介してくださいということで、紹介状を書いていただきました。

で、その緩和ケアの病院にいき、そこの先生にまだ私はこの病院に来るつもりはありませんと申し上げました。まだ治療が沢山あるのでその治療を試したいんだといいました。家の近くに大きな病院があるのでそこに行こうと思っていますというと、そこの先生がとてもいい先生で、もとの病院でもし紹介状書いてくれないというんだったら、僕が書いてあげるよと言ってくれました。心配ないよ、とおっしゃってくださいました。だからすごく心強くなりましたよね

 

 

 

★「もう治療法がありません。緩和ケアに言ってください」

 


進行したがん患者なら、いつかそのときが来る…そう思っていますよね。でも「それは今じゃない、まだ先の話だ」と同時に思っている。私・聞き手のさくえもんがそうです。この言葉は現実であると同時に、現実ではないものと考えます。だから、もし、何の準備もしていないところに、突然、これを言われたとしたら・・・冷静でいられるわけがない。

 

 

文字数の制限でMIRAさん④へと続きます。

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