アクティブペイシェント・山岡鉄也さん②

★早期緩和ケア実践へ。緩和ケアは最期だけじゃない。

病気がわかってから3年後の2013年、山岡さんは緩和ケアを受診します

 

実は緩和ケアとかリハビリ科はどっちかというと積極的な気持ちでね。自分の体調を治すために、それももちろんあるんだけれども、みんなやっていなくて、やっていないのなら、実践してみてちょっと試したいというところもあって。だって緩和ケアは治療早期からと言われているけれども、僕の周り、誰もやっていないんですよ。

で、だいたい、「緩和行き=終末期=ターミナルケア」と誤解しているわけでしょ。実際には違うんですよね。緩和医療学会のパンフレットにも堂々と緩和ケアは治療早期からです、と書いてある。 別にホスピスとはいわなくて、緩和ケア病棟は1回入って終わりではなく、また出てくればいい。要するにターミナルはジ・エンド・オブ・ケアではない。ターミナルは飛行場だから飛び立ったり、降りてきたり、自由自在なんです。緩和病棟にいってちょっと自宅に行きたいなと思えるくらい元気になったら、また戻ればいいし。自宅にいたら、周りの人が疲れてしまうじゃないですか。だから周りの人が疲れてきたら、その人が元気を取り戻すためにちょっと短期で緩和ケア病棟に行ったりして、また帰って来ればいい。そういうようなことが書かれているのです。でも、実際のところ、そんな人いないじゃない。

 

――いないですね

 

で実践しようと。実践してみたら、本当に役立って。

 

――どのへんが役立ちましたか。痛みですか?精神的なものですか?

 

全部。フィジカルもメンタルも両方。フィジカルでいうと、痛み止めとか下痢止めとか、あと咳止め。そういったものの処方とか。そもそも緩和ケアというのは、「患者イニシアチブ」というのが重要で。

 

――患者イニシアチブ?

 

「患者主体」と言うのかな。つまり受身になっているよりも自分が主体的に動く方が楽ということ。副作用とか痛みは個人差があるので、医者はわからないですよね。だから患者自身にマネジメントさせるというように意識的に行っているところがある。自分がこの薬を飲むとこんな感じでコントロールできるというのを、自分でないとわからないので、自分でコントロールしましょうというのがあって。緩和ケアにいくと、どっちかというとそういう患者中心の考え方を学ばされるのです。

まず処方を出すじゃない。その処方を出すに当たって、対話型で30分ぐらい時間を取ってくれる。そこでまずは(患者の状況を)聞き出すのね。対話してくれて、それに対して自分はどう対応するのかというところから、だんだんその人が主体的に自分で自ら、頓服(とんぷく※注)が使用できるような感じに。通常の呼吸器内科とかだと、診察は5分ぐらいで終わることもありますよね。(笑)

 


<※注・補足>頓服とは、簡単に言えば、症状が出たとき薬を服用する方法。朝・昼・晩とかではない。時間が決まっていない。だから自分で自分の状況を把握していないと、正しい服用とはならない。そういうことを対話で教えてくれる。「患者の意識を変える」ことが行われるということだと思います。

 

最初は、フィジカルなところから入ったけれども、それだけでなくメンタルなところも。がんの人はメンタルに非常に影響しやすいでしょ。だから緩和ケアに精神科医が入っているところも多い。緩和ケア科を受診すると、毎回の診察にまずフィジカルのチェックがあって、その後メンタルのチェックも必ずあるんですよ。

私はそれでメンタル対応として、ソラナックスを処方されたりとか。あとは睡眠導入剤のマイスリーを処方されたりとか。

昔は薬がすごく少なかったので緩和ケア系のものは積極使用をしないで、耐性がつかないようにするという考え方もあった。今もそういうふうに思われているかもしれないけれど、それは全くの真逆。最近はむしろ積極的に使用して。痛みは痛いまま我慢をしているとその痛みを記憶してしまうことで、効かなくなるっていう発表もあって、真逆なのです。だからどんどん積極的に早め早めに緩和ケアの薬を使用してことで QOL を上げていくと。昔は3段階くらいしか手が打てなかった。今は10段階とか20段階とかある。これが効かなくなったらこれ、またこれが効かなくなったらこれ、というのがいっぱいあるし、副作用も少なめのものがどんどん開発されているので。で、基本的には早め早めに対処することで、 QOL をあげて。QOL をあげると、治療にもいい効果がありますよというエビデンスも出ていまして、まぁそれは非常に良い経験ですね。

 



★がんリハビリテーション 実践へ

 

 


そもそも「がんリハビリテーション」てなんでしょう?

ちょっとインターネットから引っ張ってみると・・・

体力の低下、倦怠感、むくみ、しびれ、麻痺、疼痛……。がん患者の多くは、体になんらかの問題を抱えているといわれています。これまで日本では、がん治療は治すことに主軸が置かれ、がんや治療によって患者の体に生じるさまざまな障害や後遺症には、ほとんど目が向けられてきませんでした。しかし、がんの早期発見や治療の進歩によって死亡する人は減少傾向にあり、治癒する人や、治療を受けながら仕事を続けたり、家庭でふつうに生活を送ったりする人が増えています。2015年には、がんとともに生きる患者は、500万人を超えると予測されています。がんになっても、「がんとともに生きる」時代になっているというわけです。欧米では、がん医療におけるリハビリテーションの取り組みは1970年代頃から開始されてきました。日本では、これまで置き去りになっていたがん患者の生活の質にようやく注目が集まりつつあります。

 

うーむ・・・これさ、簡単に言うと、患者はいろいろ問題抱えているけども、実際の細かい症状別の解決策は知らない。それが存在することすら知らない。それを教えてくれる、ということでいいのかなと思います。

例えば、がん患者になると、体重減ります。どうやって戻すの?というところをやってくれる。起こった障害(体重減少)にあわせて、リハビリのやり方(山岡さんの場合は筋トレ)を教えてくれると。

実際に山岡さんががんリハビリテーションを受けたのは、治験薬が効いているんだけれども、副作用が強く、10キロほど体重が落ちてしまったことから始まっています。

 

下痢になって体重が減って・・・妻はとにかくどんどん10キロぐらい体重が減ってしまうというのをすごく気にしていて・・・、すごい不安で。そして、ネガティブシナリオもあったんですけども、リハビリの先生が筋力を上げることで変わるし体重も増えてくるから、と。そんな太鼓判を押してくれたんです。それを信じてやっている間に実際に体重もあがってきて・・・

 

やっていることは簡単な筋トレ。注意点としては、僕は骨転移があるのでひねっちゃいけないとかね。重いものを持つときはこういうふうに持ちましょうとか。もし多少痛みが出てくるのであれば緩和ケアで痛み止めの処方も必要かもしれないけれども、こういうサポーターを使うことでQOL が上がるよ、とか。実は本当に、緩和ケアとすごく似ているんですよ。がんリハってね。欧米ではエクササイズはセラピーの一つになっていてMD アンダーソンがんセンターが英文メールニュースを出しているんですけど、特集の2回に1回ぐらいがエクササイズです。実際にがんのセラピーとしても確立しています。そういうのを研究している人もいて。だから日本でも、もっと取り入れればいいと思っています。

 

このがんリハビリテーション。

実は肉体的な面だけでなく、精神面にも良い影響があったと山岡さんは語ります。

山岡さんは、治験に参加してしばらくした頃に、突然、地下鉄でパニックを起こしたことがありました。

 

地下鉄に乗っていたら、急に息が上がるようになってしまって・・・。咄嗟に吐くのではなくて吸う方を意識していた。それだと呼吸がさらに浅くなって逆効果になって、悪循環になってしまったのです。浅い呼吸になってさらにパニックになるというか。がんリハビリテーションでは、口すぼめ腹式呼吸の反復練習も行っています。それで、そういう時は口をすぼめて、吐くのをゆっくりと落ち着いて行うといいということを学びました。がんリハでこの口すぼめ腹式呼吸を習ってからは、地下鉄の中でパニックを起こす事はなくなりました。ちょっとパニックになりそうな気配を感じる時に、その呼吸を意識的にやっていると、そこまで至らないでキープできるとそういうふうに言われたのね。ちょっと怪しくなったら意識的に腹式呼吸をすることで持ち直しますよって。